今更ですが、『スーパーセカンド』って何でしょうか?

スーパーワインという言葉は知っているが Wine-linkの『ワインの用語辞典』の単語を少しずつ作成、登録しているのですが、先日、書いていて、「あれ?」っと悩む単語が出てきました。『スーパーセカンド』です。

by Wine-Link

最終更新日:2024-02-27

写真は『とある1級シャトー』から見えるコス・デストゥルネルのシャトー。

どのシャトーから撮影したのかは、マガジンの最後に。



『スーパーセカンド』という言葉。知ってはいるが。まずは、その背景を。

Wine-linkの『ワインの用語辞典』の単語を少しずつ作成、登録しているのですが、先日、書いている時に、「あれ?」っと悩む単語が出てきました。『スーパーセカンド』です。

「知ってるぞ。」という方の中でも、認識の差がありそうなのです。

ここで、まず、『スーパーセカンド』という単語が生まれた背景を説明させてもらいます。




フランスの銘醸地、ボルドーには、『メドック格付け』、という格付け制度があります。

1855年にパリで博覧会が開かれる際に、何か面白い企画が出来ないのか、という事でナポレオン3世の指示により、優れたワインの集まるメドック地区の中で、評判の高かったシャトーを61程選出し、1級から5級まで格付けさせたのです。

この格付けは、その時の当事者達が思いもしなかった程に、現代においても広く認知され、各シャトーのイメージや値段に大変大きな影響を与えています。

そして、1855年以来、ごく一部を除いて見直されていません。


写真:ライオンと柵に守られたセラーがBANK(銀行)のようなレオヴィル・ラス・カーズ 2級

そんな中使われ始めた『スーパーセカンド』という単語

当時の格付け内容が妥当であったどうかは別として、1855年から170年程経過し、オーナー&醸造家は替わり、シャトーによっては、畑を買い足したりしているというのに、見直される事は無いのです。

努力してワインの品質が上がっても、入れ替え戦無しでは、「たまったもんじゃない!」と不満なシャトーが出ていても当然です。

そんな中で、産まれたのが、『スーパーセカンド』という単語です。

『1級シャトー』に入れ替え戦を挑めそうな勢いの、すごい品質&すごい値段の2級シャトーをまとめてこう呼んだのです。

はい、ここで、「あれ?」って思われた方多いですね?

でも、続けます。

レオヴィル・ラス・カーズ
コス・デストゥルネル
モンローズ
デュクリュ・ボーカイユ
ピション・ラランド

この辺りの2級が『スーパーセカンド』として含まれました。

写真:美しく整然と樽が並べられたモンローズのセラー 2級

その後、『スーパーセカンド』は変化していく

『スーパーセカンド』という呼び名は現地ボルドーで始まったのでは無く、アメリカの雑誌、ジャーナリスト達から始まったと言われています。

やはり、こういう呼び名はキャッチ―で商売的にはとても効果があります。

『スーパータスカン』、『シンデレラワイン』、等もそうですね。なんだかがぜん盛り上がってきますよね。

自然と、『スーパーセカンド』という呼び方は、各国のワイン業界の人々に広まり、ボルドーネゴシアン達も使うようになりました。




しかし、その後、確か2009年ヴィンテージ辺りからパルメ、ポンテ・カネなどの2級以外のシャトーも大きな躍進を遂げます。品質の上でも価格の上でも。

そういったシャトーの躍進を受け、3〜5級の跳び抜けた品質&価格のシャトーも『スーパーセカンド』に含めて呼ばれるようになったのです。

具体的なシャトーとしては、

レオヴィル・ラス・カーズ
コス・デストゥルネル
デュクリュ・ボーカイユ
モンローズ
ピション・ラランド
ピション・バロン
 + 
パルメ
ポンテ・カネ
ランシュ・バージュ
カロン・セギュール

辺りが『スーパーセカンド』と呼ばれるようになりました。

現在ではこのラインナップの方が、『スーパーセカンド』としてしっくりくる人が多いのではないでしょうか。



写真:ビオディナミなど果敢に挑戦を続けるポンテ・カネのシャトー 5級

現在の業界ではどうでしょうか

念の為、現役のバイヤーさんやボルドーのネゴシアンに確認したり、日本のネットの販売サイトも見てみましたが、現在での業界の認識も概ね、『スーパーセカンドとは、2〜5級の中で、1級に匹敵する品質のシャトー』となっているようです。

もちろん、それぞれ、入ったり入らなかったりするシャトーはあります。

ちなみに、ワインスペクテーターのHPの用語集の『スーパーセカンド』の説明には、「1級に比類する2級シャトーの事。コス・デストゥルネル、デュクリュ・ボーカイユ、レオヴィル・ラス・カーズ、パルメ(実際は3級なのだが)、ピション・ラランドを含む。」とありました。

また、少し古い記事を拾ってきますが、ジャンシス・ロビンソン氏のサイトの、2010年ヴィンテージの総評を書いている記事は、2級のシャトーのみを『スーパーセカンド』に含めて記載していました。

写真:圧倒的なお城感のピション・ラランドのシャトー 2級

更に広がっているバージョンあり

加えてちなみに、ボルドーネゴシアンに聞いてみた所、日本以外では、ラ・ミッション・オー・ブリオンを入れて呼ばれる事も多いようです。

更に右岸の優れたシャトー、フィジャック、パヴィ、アンジェリュス、トロロン・モンドなども含められる場合があり、更に更に、パプ・クレマン、オー・バイィが含められる場合もあるそうです。

随分幅広くなりますね。

ボルドー全体で1級シャトーに挑んでいる図式みたいです。

正式な規定では無い訳ですから、個人差、また、国によって差があるのはもっともですね。




それにしても、このメドック格付け、見直される事はあるのでしょうか?

難しいのでは、というのが大方の見方です。
私もそう思います。



最初の写真の答えは、『シャトー・ラフィット・ロートシルト』からの一枚でした。

位置関係で分かっちゃいましたか? 

結構近いんですよね。

コスからラフィットは600m程の距離で、間を遮るものがありません。
標高的にはコスの方がやや上だった気がしますね。


投稿者

  • 山崎 久美子

    ・ソムリエエクセレンス(JSA認定)
    ・SAKE DIPLOMA(JSA認定)
    ・DIPLOMA LEVEL3(WSET認定)

    ワインの輸入商社にて、バイヤーを経験。
    退社後の現在は、ワインのなんでも屋をちみちみとやっている。

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公開日 :
2021/10/01
更新日 :
2024/02/27
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