スペインの有名なスパークリングワイン、カバ。スペインのみならず世界的に有名なスパークリングワインです。
そのカバの規定が2020年に新しくなりました。変わった点、変わらなかった点に触れながら新規定についてまとめてみたいと思います。
あらためてですが、カバとは、スペインの北東部、カタルーニャ州を中心に瓶内二次醗酵で造られるスパークリングワインです。
ワイン法でカバ(Cava) D.O.という原産地呼称保護が定められており、この名前を名乗るのに必要な、栽培エリア、認可ブドウ品種、製造などが厳しく決められています。
カバという名前は、カタルーニャ語で『洞窟』を意味しているのですが、それは、カバが実際に洞窟をセラーとして利用していた事に由来しています。
カバは全体的に、長く熟成がなされているにしては、良い意味ですっきりとしたシャープなスタイルが多いように感じます。主要3品種である、シャレロ、マカベオ、パレリャダのスタイルが影響している所もあるのかな、と思います。
価格的にはリーズナブルなものが多く造られていますが、その『リーズナブル』というイメージを持たれている、という点が今回の新規定への動きになった理由の一つだと思われます。
では、何が変わったか見ていきましょう。
これまでのカバの生産地は
『カタルーニャ州、アラゴン州、ナバーラ州、ラ・リオハ州、バスク州、エクストレマドゥーラ州、バレンシア州の7つの州にまたがる160の自治体に広がる』
でしたが、産地が広い地域に散っている為、生産量の95%ほどが集中している『カタルーニャ州』がカバの主たる生産地、というざっくりとした感じで説明される事が多かったと思います。
スペイン全土に散っているいくつかの産地でも造れるのだけど、実質95%がカタルーニャ州で造られるから、全てのカバの産地をピシっと記載した地図が少なかった感じです。
それが、今回の規定で、カバの産地として明確に、下記の4つのゾーンに決められました。
『コムタッツ・デ・バルセロナ Comtats de Barcelona 』
『バリュ・デル・エブロ Valle del Ebro 』
『レバンテ Levante 』
『ビニェドス・デ・アルメンドラレホ Vinedos de Almendralejo 』
写真:【なんだかスッキリしましたね】
もちろん今後も、実質『コムタッツ・デ・バルセロナ』が主体となりますが、はっきりとゾーンが設けられた事で、少しずつ変わっていくゾーンもあるかもしれません。
それぞれの産地の特徴をまとめてみます。
『コムタッツ・デ・バルセロナ 』
スペインの東北に位置するカタルーニャ州にあり、バルセロナを取り囲むうように位置しています。規定が新しくなる前からカバの主たる産地で、カバの生産の95%以上がここです。
地中海性気候ですが、内陸に入っていくと大陸性気候寄りになります。中程度の標高の山脈の間の渓谷から、平地まで、地理的条件は様々で、ブドウにも多様性があります。海沿いにはミネラル豊富なタイプも多く見受けられます。
『バリュ・デル・エブロ 』
スペインの北部、リオハの近くに広がる産地です。エブロ川流域に位置する為、川の影響を受けています。内陸に位置する為、冬は寒く、夏は暑く乾燥している、大陸性気候です。
果実味豊かで長期熟成が可能なスタイルが見受けられます。
『レバンテ 』
バレンシア州の内陸部、標高600~900m程の台地に位置している産地です。
内陸性気候で、乾燥したエリア。トロピカルなタイプが造られています。
ちなみに、カバのHPには『名称は暫定』と書いてあります。
写真:【早く暫定名で無くなるといいね】
『ビニェドス・デ・アルメンドラレホ 』
スペインの南部、ポルトガルに近い所に位置しており、標高200〜450mと平地に近い産地です。雨は少なくかなり乾燥していて、冬は穏やかです。ソラノ(Solano)と呼ばれる温暖な風の影響を受け夏は高温です。
写真:【ちょっと長い名前】
今回、4つのゾーンに加えて、サブゾーンも決められました。
一番主要な産地となる『コムタッツ・デ・バルセロナ』には5つのサブゾーンがあり、東から挙げますと、
『プラ・デ・ポネント(Pla de Ponent)』
『セラ・デ・プラデス(Serra de Prades)』
『コンカ・デル・ガイアConca del Gaia』
『バイス・ダノイア・フォア(Valls d’Anoia-Foix)』
『セラ・デ・マール(Serra de Mar)』
です。
写真: 【それぞれ名前にリズム感があるな】
『バリュ・ド・エブロ』は、
『アルト・エブロ(Alto Ebro)』
『バリェ・デル・シエルソ(Valle del Cierzo)』
の2つのサブゾーンです。
『ビニェドス・デ・アルメンドラレホ 』、『レバンテ 』には今の所サブゾーンは決められていません。
主に熟成を基準としたカテゴライズが少し変わりました。
最低熟成期間を含めて、従来と新規定と比較すると下記のようになります。
カバ 9ヶ月
⇒ 【新】カバ・デ・グアルダ
Cava de Guarda
9ヶ月
カバ レゼルバ 15ヶ月
⇒ 【新】カバ・デ・グアルダ・スペリオール
レゼルバ
Cava de Guarda Superior Reserva
18ヶ月
カバ グラン・レゼルバ 30ヶ月
⇒ 【新】カバ・デ・グアルダ・スペリオール
グラン・レゼルバ
Cava de Guarda Superior Grand Reserva
30ヶ月
カバ・デ・パラヘ・カリフィカード 36ヶ月
⇒ 【新】カバ・デ・グアルダ・スペリオール
パラヘ・カリフィカード
Cava de Guarda Superior de Paraje Calificad
36ヶ月
そしてもうひとつの大きな変更点は、この後者の『カバ・デ・グアルダ・スペリオール』のグループの3種に関しては、2025年までにオーガニック栽培のブドウを100%使用する事が必須となった事です。
カバの原産地呼称統制委員会のHPにも、『認証を得た』という表記も見られますので、100%オーガニック栽培であるだけでなく、オーガニック栽培の認証を取る必要がありそうです。認証は時間とコストがかかるので、なかなか大変です。
使用できるブドウ品種に関しては新規定も変更はありません。
従来通り、白ブドウの主要な品種は、『マカベオ』、『シャレロ』、『パレリャダ』の3つ。そして、それに加え、シャルドネとスビラ・パレンが認められています。そして、黒ブドウはガルナッチャ、モナストレル、トレパット、ピノ・ノワールです。
私個人としては、『マカベオ、シャレロ、パレリャダのブレンド』のような地ブドウ系と、『シャルドネ100%』のような国際品種系と区分する規定があっても面白いのかな、と思いました。
また、味わいの規定も変更が無く、従来の通りです。
辛口タイプから甘口タイプへの順に、ブルット・ナトゥーレ、エクストラ・ブルット、ブルット、エクストラ・セコ、セコ、セミ・セコ、ドゥルセです。
なお、『カバ・デ・グアルダ・スペリオール』のグループが認められているのは、このうち、ブルット・ナトゥーレ、エクストラ・ブルット、ブリュットまでの辛口グループ名称で、以降のエクストラ・セコ、セコ、セミ・セコ、ドゥルセなどのほんのり甘口〜甘口名称は認められていませんが、これも従来と変わらずです。
以上、カバの新規定をまとめてみましたが、また、数年後に見直しがあるかもしれませんね。
さて、新規定の4つのゾーンの名称は何でしたか?
一番メジャーなものだけでも覚えてみてくださいね。
・ソムリエエクセレンス(JSA認定)
・SAKE DIPLOMA(JSA認定)
・DIPLOMA LEVEL3(WSET認定)
ワインの輸入商社にて、バイヤーを経験。
退社後の現在は、ワインのなんでも屋を
ちみちみとやっている。