混同しがちな用語解説 『国際品種』、『固有品種』、『土着品種』とは? いつも使う時にモヤモヤしてませんか?

ブドウ品種を説明する際に、『国際品種』や『固有品種』、『土着品種』、などの言葉を使う事があります。大体意味は分かるとして、この場面はどの単語を使うと良いのか、悩んでませんか?特に『固有品種』と『土着品種』で私は悩んできました。なので、それぞれの意味合いを、あれこれ勝手に考えてみようと思います。

by Wine-Link

最終更新日:2024-02-28

『国際品種』と『固有品種』と『土着品種』

ファッションやスイーツに流行があるように、と言ったら極端だけれども、ワインにも流行があり、使われるブドウ品種にも流行があります。

一時期、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シャルドネといった、味わいにボリュームがあり消費者に人気の出やすい品種が流行し、世界各地に栽培が広がりました。そういった品種は『国際品種』と呼ばれています。


その後、『国際品種』の人気がひと段落し、ポルトガルの多くのブドウ品種などのような、もともとその地方で栽培されてきた品種、余り他の地方で見られない品種である、『固有品種』『土着品種』に注目が向けられるようになってきました。

もちろん、今でも『国際品種』は人気ですが、『国際品種』であっても、その地方の個性が出たスタイルの方が好まれる傾向がありますね。




『国際品種』とは

『国際品種』という言葉は、『国際的に広く栽培されている品種』という説明が適切かと思います。

英語では、”International grapes”などと表現されます。

どこまでが『国際品種』に含まれるのか、というのはどこかで決められている訳ではありません。

人によって認識にずれがあると思いますが、一般的に『国際品種』に含められるブドウ品種はこの辺りが多い様です。

【黒ブドウ品種】     
カベルネ・ソーヴィニヨン  
メルロー          
ピノ・ノワール      
シラー

【白ブドウ品種】
シャルドネ
ソーヴィニヨン・ブラン
リースリング


写真:【国際品種の王 カベルネ・ソーヴィニヨン】

そして、これらに次いで、ピノ・グリ、カベルネ・フラン、セミヨン辺りが含まれる事が多い感じですね。

ゲヴュルツトラミネール、グルナッシュ辺りになるとちょっと意見が分かれてきそうです。

ピノ・ブランなどになってくると、『国際品種』として挙げる人は少なそうです。

ピノ・ブランはシノニムも多く、多くの国で栽培されているのですが、ヨーロッパ外の栽培地が少ない、もしくは、生産量が多くない、というのが『国際品種』として挙げられにくい理由でしょう。

そういった訳で、『国際品種』というのは、『国際的に広く栽培されている品種』であるのに加えて、『国際的に広く認知されている品種』という意味合いも含まれているのだと思われます。




『国際品種』の補足:マイナーな使われ方

補足ですが、O.I.V.(International Organisation of Vine and Wine / 国際ブドウ・ブドウ酒機構)が認定したブドウ品種の事を、『国際品種』と記載する事があるようです。

『甲州が国際品種として認められた』という感じの記載ですね。

英語では、O.I.V.が認めているブドウ品種の事は、”The list of vine varieties of O.I.V.”, “O.I.V. list of grape varieties” という記載のされ方なので、『O.I.V. 認定品種』『O.I.V.リスト品種』という日本語訳の方が近い気もしますが、『国際品種』の方が、業界以外の人には話が分かりやすいのかもしれませんね。




『固有品種』とは

さて、『国際品種』より、ちょっとややこしいのが、『固有品種』と『土着品種』です。

この『固有品種』と『土着品種』は似ていますが、若干のニュアンスの違いを感じるので、まずは『固有品種』という言葉の使われ方を考えてみたいと思います。


『固有品種』は英語で、”unique variety of (産地) ”や、“original grape variety” などと表現されます。

『固有品種』は、『国際品種』の反対的な意味合い、と考えると、『世界的に広く栽培されていない品種』、『その地で主に栽培されている品種』というのがざっくりとした意味だと思います。

『固有品種』として挙げられるのは、ポルトガルのトウリガ・ナシオナル、トウリガ・フランカ等の多くの品種。他には、ギリシャのクシノマヴロ、日本の甲州などでしょうか。

しかし、この『固有品種』に当てはまる品種にも幅あるように感じます。いくつかのパターンに分けてみたいと思います。

写真:【イタリアの固有品種、ピガート】

『固有品種 パターンA』

ひとつめは、

『固有品種パターンA』:『その地が発祥で、その地で育って、今も主要な品種』


このパターンとして間違いないのは、ジョージアのルカツィテリや、サペラヴィなどの品種。

なんと言ってもヴィティス・ヴィニフェラの起源がジョージアにあると考えられているので、国を出た事が無いはずです。

また、ギリシャも同じで、紀元前4000年代後半にはブドウ栽培が行われており、そのまま移動せず、いくつかの突然変異をこの地で経て、今に至ると思われます。

『古代品種』なんて表現も使いたくなってきます。

また、オリジンとなるブドウ自体は、ギリシャ辺りから伝わってきているにしても、伝来されてから、交配されたり、突然変異したりして、今のその品種のキャラクターになった多くのヨーロッパの品種達も、このパターンに一緒にしてもいいでしょう。
イタリアのグレーコ、グレカニコや、スペインのテンプラニーリョなどが、挙げられます。



『固有品種 パターンB』

次が、

 『固有品種パターンB』:『他の地で広く栽培されていたが、別の地に伝来し、その地でも広く根付いた品種』


このパターンの代表としてアルゼンチンのマルベックを思い浮かべています。

マルベックはフランスからアルゼンチンに19世紀に導入され、土地との相性が良かった為、広く栽培されるようになりました。

今でもフランスで栽培されていますが、全生産量の7割強をアルゼンチンが占めており、「アルゼンチンの品種!」と思う人の方が多いでしょう。

チリのカルメネール、アメリカのジンファンデルもこのパターンに当てはまりますね。

写真:【アルゼンチンと言えばマルベック】

『固有品種 パターンC』

最後に、

『固有品種パターンC』:『その地で人の手によって交配されて産み出された品種』


日本で川上善兵衛氏がベーリーとアリカント・ブスケを交配させて造り出したマスカット・ベーリーAや、南アフリカでアブラハム・ペロード博士がピノ・ノワールとサンソー(エルミタージュ)を交配させて造り出したピノタージュなどを、これにイメージしてます。



『固有品種』に使われそうなんだけど、というパターン

ニュージーランドの、『その地で広く栽培されている品種』であるソーヴィニヨン・ブランにも、『固有品種』という単語が使いたくなります。

あれだけニュージーランドに広く根付いているから、『固有』と言っても良いのでは、と思ってしまうのです。

ただ、まだ、広く栽培されるようになってからの期間が短いし、ソーヴィニヨン・ブランは世界で広く栽培されているので、やはり違う気がしますね。


写真:【ソーヴィニヨン・ブランの聖地、マールボロ】

そんな時の表現として、『代表品種』『主力品種』という表現を見つけました。
こっちの方がしっくりきますね。

英語で、”Flagship variety”という表現を見つけました。
なんか力がみなぎってる感じがして良い表現ですね。



ちなみに、フランス、ボルドー地方のカベルネ・ソーヴィニヨン、ブルゴーニュ地方のピノ・ノワール、この辺りも、両地方を代表する品種であり、元々は紀元前1世紀頃にローマ人によって伝えられたといっても、『その地で広く&長く栽培』されているという点において、『固有品種』という言葉を使いたくなりますが、余りにも世界的に栽培が広まっている品種なので、『固有品種』とは言いづらいですね。

やっぱり、『国際品種』ですよね。

イタリアの『固有品種』と言えそうなサンジョヴェーゼも、今よりも世界の栽培エリアが広がると、『国際品種』と呼ばれ、『固有品種』ではしっくりこなくなるのだと思います。




『土着品種』とは

では、『土着品種』ですが、『その地に昔から(もしくは長く)根付いている品種』という感じの単語ですね。『地場品種』とも言い換えられます。

英語では、”Native grape variety”や、”indigenous variety in (産地)”と、表現されます。

『固有品種』と似た単語だと思うのですが、先ほどのパターンと合わせて考えていきましょう。



まず、固有品種パターンA、『その地が発祥で、その地で育って、今も主要な品種』は、『土着品種』と同一の意味と言って良いでしょう。サペラヴィなどですね。

次に、固有品種パターンB、『他の地で広く栽培されていたが、別の地に伝来し、その地でも広く根付いた品種』は、『土着品種』と言い換えにくいですね。マルベックがアルゼンチンの『土着品種』というのは余りしっくりきませんよね。

最後に固有品種パターンC、『その地で人の手によって交配されて産み出された品種』も違いますね。マスカット・ベーリーAが『土着品種』というのはおかしいですね。

という訳で、『土着品種』≒『固有品種』に思いがちですが、
『土着品種』=『固有品種のパターンA』と言えそうです。



写真:【こちらは日本の固有品種、甲州です。※ちなみに、ページのトップにあった写真は、この甲州の実の断面です。】

まとめ

そういった訳で、あらためてまとめるとこんな感じでしょうか。

『国際品種』は、
『国際的に広く栽培されていて、広く認知されている品種』

『固有品種』は、
『その地で主に栽培されており、他で余り栽培されていない品種』

『土着品種』は、
『その地に昔から、もしくは長く、根付いている品種』


ある程度の定義づけは出来るものの、人によって認識の違いがあったり、時がたつにつれ流動したりする単語なので、やっぱり使うのに気を使いそうです。。。



投稿者

  • 山崎 久美子

    ・ソムリエエクセレンス(JSA認定)
    ・SAKE DIPLOMA(JSA認定)
    ・DIPLOMA LEVEL 3(WSET認定)

    ワインの輸入商社でバイヤー職を経て、現在は、エージェント、ワイン講師、通訳、ライターなど、ワインのなんでも屋をちみちみとやっている。

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公開日 :
2022/06/12
更新日 :
2024/02/28
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