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セカンドワインがセカンドワインで無くなる日
ボルドーで起きている、セカンドワインがセカンドワインで無くなる、という話。
by Wine-Link
最終更新日:2024-10-23
目次
セカンドワインとは
『セカンドワイン』とは、生産者のトップのワイン(=ファーストワイン)の次のグレードのワインの事を指す。
と言っても、基本、どこの国・地方でも、法的な規定は無く、生産者がセカンドワインと言えば、そのワインはセカンドワインである。
最初に産み出したのはフランス、ボルドー地方だと言われている。
ボルドーのセカンドワイン
1900年の少し前位から、ファーストワインの品質を上げる為、維持する為、ボルドーでセカンドワインが造られるようになった。
(※他にも色んな事情あり)
追って多くのシャトーが造るようになり、1999年に私が業界に入った時には、セカンドワインが無いシャトーを見つける事が難しい位だった。
写真:ファーストに加えてサードの流れも
セカンドワインやめます?
そんな中で、近年、『セカンドワインである事をやめたワイン』がある。
シャトー・レオヴィル・ラス・カーズが造る『クロ・デュ・マルキ』だ。
ラス・カーズは1902年からセカンドワインとしてクロ・デュ・マルキを造り始め、長く高い評価を得てきたが、いつ頃からか、『うちのクロ・デュ・マルキは、ラス・カーズと区画が完全に別なのだから、本当はラス・カーズのセカンドワインではない』とシャトーが言うようになっていた。
そうは言っても、業界は『まあでも、セカンドでしょ?』と、クロ・デュ・マルキはセカンドワインとして扱ってきたのだが、ついに、2015年ヴィンテージから、『クロ・デュ・マルキはセカンドでは無い』と受け入れるしか無くなった。
どうして認める事になったか?
どうして受け入れる事になったのか?
セカンドにもファーストにも、新たにセカンドワインが登場してしまったからである。
書き出すとこういう風な関係になった↓
ファーストワイン:シャトー・レオヴィル・ラス・カーズ
そのセカンドワイン:ル・プティ・リオン・デュ・マルキ・ド・ラス・カーズ(新登場)
ファーストワイン:クロ・デュ・マルキ
そのセカンドワイン:ラ・プティット・マルキーズ・デュ・クロ・デュ・マルキ(新登場)
写真:もう名前が覚えられ無いなんて言えないよ絶対、と呟きたくなる。
そういう訳でセカンドワインで無くなった
こうなってしまったら、もう、そのヴィンテージからクロ・デュ・マルキはファーストワインと受け入れるしか無くなった。
お金の話をすると、セカンドワインは高くてもファーストの値段の半分か1/3位にしておくのが一般的なのだけれど、クロ・デュ・マルキはセカンドで無くなったのだから、売れるなら、しがらみ無く値段をつけられる事になる。
何をセカンドにしていた?
改めてだけど、セカンドワインを造る場合、いくつかパターンがある。
①造っているワインを、ブレンド前に試飲して、質・スタイルによって、セカンドとファーストに分ける
②樹齢の低い区画のブドウはセカンドワインにまわす、と年始には決めておく
③恵まれた条件の区画をファースト用、比較すると劣る区画をセカンド用と決めておく
(もしくは、ファーストの理想とするスタイルに向いた区画をファーストに、セカンドの理想とするスタイルに向いた区画をセカンドに決めている)
クロ・デュ・マルキは③のパターンで、ラス・カーズの区画の中で樹齢が低い区画のワインも、その年の出来が良く無かった区画のワインも、クロ・デュ・マルキには使用しなくなっていたのである。
そして、最終的にそれぞれのワインにセカンドを作った事で、それが決定的になった。
今後も同じ動きが
完全じゃないにしても、ほぼ③のパターンのシャトーは他にもある。
基本セカンドとファーストの区画は分かれているけど、ファーストの樹齢の低い区画をちょっとだけセカンドに回したり、ファーストのメルローの比率を今年は上げたい、という年に本来セカンドの区画から少しだけファーストに回したり、という感じで。
でも、そこをちょっと調整すれば、ファーストとセカンドの区画は完全に分けられる。
そういう訳でやっぱり、他にも出てきている。例として、シャトー・デュクリュ・ボーカイユ。
写真:風格のあるシャトー
シャトーは、セカンドの区画はファーストと分けている、という事で、ラ・クロワ・デュクリュ・ボーカイユはセカンドワインでは無い、として主張してきている。
業界的にはまだ、セカンドワインという認識であるけれど、サードワインの位置づけであるル・プティ・デュクリュなどとの関係を整備して来たら変わるかもしれない。
他にも、シャトー・ブラーヌ・カントナックも数年前にファーストとセカンドの区画を完全に分ける決断をした。
この先、他にもこういった動きが沢山出てくるのだと思われる。
正直、ついて行くのが大変、です。
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