スペイン アンダルシア

ボデガス・ラミロ・イバニェス

サンルーカル・デ・バラメダの伝統を未来へ繋ぐワイナリー

Sanlucar de Barrameda

サンルーカル・デ・バラメダの記憶を取り戻す醸造家

サンルーカル・デ・バラメダの記憶を取り戻す醸造家

サンルーカル・デ・バラメダ生まれのラミロ・イバニェス氏が、ヘレスの伝統を蘇らせ、サンルーカル固有のテロワールを余すことなく表現するために、2012年に立ち上げたワイナリー。設立当初は、彼が最高のアルバリサ土壌が存在すると考える標高45メートルを表す「Cota 45」というワイナリー名でしたが、2022年ヴィンテージ以降は彼自身の名前を冠した「ボデガス・ラミロ・イバニェス」として瓶詰めされるようになりました。

ラミロは現ワイナリーの初代ですが、父方の家系はこの地域でも特に優れた名高い畑で、代々ブドウ栽培に携わってきた歴史があります。ラミロ自身はワイン醸造学の学位を取得し、ボルドーやオーストラリアなど世界各地のワイナリーで研鑽を重ねた後、故郷サンルーカルへ戻り、複数のボデガでコンサルタントとして活動しました。ヘレスのあるワイナリーで働いていた時、半世紀前の古いヴィンテージを飲む機会があり、当時醸造されていた同じワインと比べて、より複雑で、より興味深い味わいであることに気付きます。この経験は、伝統的な知識への強い探究心を呼び起こし、やがて自身のワイナリー設立へとつながるきっかけとなりました。ラミロは今では、シェリー・トライアングルのワイン文化における「失われつつある記憶」を取り戻す活動を牽引する人物の一人であり、スペイン南部のワインを愛する人々や専門家から非常に高い評価と尊敬を集めています。

2021年には、グアダルキビール川を望むかつての船舶修理工場を利用して、このプロジェクトのための小さなボデガを建設。彼はこのボデガを愛情を込めて「アルバリソラトリオ(albarizatorio)」と呼んでいますが、これにはヘレス地方に顕著な白亜質土壌である「アルバリサ」が秘める可能性を掘り起こすための「研究所」という意味が込められています。ラミロは土壌を深く研究する人物であり、この特別な地域ならではのテロワールを真に表現するワイン造り、そして失われつつある歴史や古いブドウ品種を未来へとつなぐことに情熱を注いでいます。

19世紀のワイン造りへの回帰

19世紀のワイン造りへの回帰

ラミロと彼の活動を理解するためには、19世紀までさかのぼる必要があります。この時代はヘレスの酒精強化ワインにとって「黄金時代」と呼ばれる時期で、シェリーはヨーロッパ、とりわけイギリスで絶大な人気を博し、スペインから大量に輸出されていました。多くの有名なシェリーハウスがこの時代に設立され、輸出量は年々増加し、1870年代にはピークを迎えました。しかし、この時代に輸出されていたシェリーの大部分は濃厚で甘く、地元の人々はむしろ酒精強化されていない白のスティルワインを好んで飲んでいました。

コンサルタント時代に古いヴィンテージのワインに感銘を受けた経験から、ラミロは19世紀のヘレスの人々が好んで飲んでいたような、古樹のパロミノから造る非酒精強化のスティルワインを造りたいと考えるようになりました。彼はサンルーカル・デ・バラメダに腰を据え、この土地の土壌や地元のパロミノの様々なバイオタイプ(同じ品種の中に存在する遺伝的・形質的に異なるタイプ)、伝統的な栽培方法、そして地元に伝わる生物学的熟成(産膜酵母と共に熟成する方法)に関する知識について、徹底的な研究を行いました。ラミロはヘレスのワイン造りの伝統について深い知識を持つ醸造家であり、同時に歴史家でもあるのです。

畑およびワイナリーにおける哲学は、サンルーカルの文化や独自のスタイルの中で、ラミロが最も魅力を感じる要素を探求し表現することにあります。それは土壌、歴史、古木、伝統的な農法、そして人々の気質といった要素に体現されています。そのスタイルは極めて個人的なもので、既成概念やグローバルな影響からは距離を置いています。畑では除草剤・殺虫剤・浸透性農薬を使用しない自然な栽培を行い、この地域を起源とする「ヴァラ・イ・プルガール」と呼ばれる伝統的な剪定方法や「カストラ(芽の処理/接ぎ木)」といった歴史ある栽培方法を重視しています。

パロミノとアルバリサ土壌

パロミノとアルバリサ土壌

ヘレスの革新的な造り手たちの多くは、ニュートラルな品種であるパロミノは、アルバリサ土壌の複雑なニュアンスを映し出すのに適した品種だと考えています。一言にアルバリサ土壌と言っても、その中には様々なタイプがあり、ラミロはその研究に情熱を注いでいます。アルバリサ土壌のタイプごとに異なる質感を表現することは、ラミロのワイン造りの根幹でもあるのです。彼が特に注目するのはサンルーカルにある3つのパゴ(畑)、ミラフローレス、カラスカル、マイナで、彼はこれらの畑ごとに酒精強化を行わないワインを生産しています。アルバリサ土壌の異なるタイプについては多くの調査が行われていますが、こうした単一畑ワインを造る醸造家はラミロを含めてもごくわずかです。

異なるアルバリサ土壌の種類

●レンテフエラス(Lentejuelas)
純度の高い石灰質と高い砂含有率で知られるアルバリサで、脆い粒状の土壌。
フレッシュさと塩味、際立ったエレガンスとフィネスを持つワインを生み出します。

●ルストリージョス(Lustrillos)
鉄分を多く含み、淡いピンクから濃い赤まで、様々な赤みを帯びた色調を持つ土壌。
ワインに軽いオイリーさをもたらします。

●トスカ・セラーダ(Tosca Cerrada)
セメントを想わせるほどに硬く、石灰質の含有量が多い土壌。
ワインに骨格と、味わいの中盤以降の立体感と複雑味を与えます。

●トスカ・デ・バラフエラス(Tosca de Barajuelas)
土壌の名前は「トランプのカードの束」に由来し、薄い石灰質の層が水平に何層も積み重なった土壌。
栽培が非常に難しく、生産量は少なく、ワインはより力強く筋肉質な骨格を持つ傾向にあります。
海洋性化石を多く含み、その凝縮感と塩味を帯びた大地のニュアンスが高く評価されています。

非酒精強化ワイン「ウベシリーズ」

非酒精強化ワイン「ウベシリーズ」

ウベシリーズは自然な農法で栽培されたパロミノ種を使用し、生物学的熟成(産膜酵母と共に熟成する方法)を経たのち、酒精強化を行わずに瓶詰めされた白ワインです。かつて造られていた、気軽に楽しめる酒精強化なしのマンサニーリャを意識したスタイルで、どのワインもサンルーカルにある異なるパゴ(畑)の個性を表現することを目指しています。

醸造は非常にシンプルで、自生の酵母を使用し、醗酵中の温度管理は行いません。醗酵は1,000リットルの使用済みマンサニーリャ樽(一部は150年物)で行われ、サンルーカル特有のフロール(産膜酵母)とともに進められます。過度な介入をせず、異なるワインで熟成方法と生物学的熟成のキャラクターを揃えることで、それぞれのパゴの個性を公平に表現できると考えています。サンルーカル・デ・バラメダのマンサニーリャの原点である「畑由来のフロール(産膜酵母)をまとった白ワイン」を現代に蘇らせています。

ウベ ミラフローレス
サンルーカルでも特に名高いパゴ「ミラフローレス」は総面積160haに及ぶ歴史ある畑群で構成され、大きく3つの区域バハ(Baja)、グルグ(Gurugú)、デル・ピノ(Del Pino)に分けられます。それぞれの畑の樹齢は80年、110年、72年で、すべての畑は沿岸部の西向きの斜面に位置しており、大西洋からもたらされる湿潤な海洋性気候の恩恵を最大限に受けています。海岸沿いの畑はより冷涼で、ラミロ曰く、内陸部よりもフロール(産膜酵母)が発達しやすくなっています。畑には様々なタイプのアルバリサ土壌が見られ、サンルーカルらしい典型的な特徴が表れたワインで、ラミロが造るワインの中では最もストレートな表現となっています。

●ミラフローレス・バハ:
大西洋から約6kmに位置。主に「レンテフエラス」と「ルストリージョス」の土壌で構成されており、
スモーキーなニュアンスと非常に引き締まった爽快な味わいをワインにもたらします。
●グルク、デル・ピノ:
標高が高く、海から6.5〜7.5km離れた場所に位置。主に「トスカ・セラーダ」と「トスカ・デ・バラフエラス」土壌で構成されています。
より厳格で、柑橘系のニュアンスが強く、しっかりとした骨格を持つ味わいが特徴です。

ウベ ミラフローレス アルタ
「ミラフローレス」の中でも特に評価が高く、ラミロ自身もサンルーカルで最高の畑の一つと考える「カセリオ・デ・ミラフローレス・アルタ」の中心部に位置する、極めて純度の高いアルバリサ土壌で栽培されたブドウから造られています。この畑のアルバリサは「トスカ・セラーダ」と呼ばれるタイプで、珪藻類の化石を豊富に含み、緻密な土壌構造を持ち、ブドウ樹が根を伸ばすのにやや困難を伴う特別な土壌です。圧倒的なミネラル感と豊かな旨味があり、その力強い骨格とミラフローレス特有の大西洋的な繊細さが融合することで、力強さと優雅さを兼ね備えた稀有なワインとなっています。

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公開日 :
2026/07/22
更新日 :
2026/07/22

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