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人気上昇中!話題のワイン、『ペット・ナット』について解説してみます
『ペット・ナット』と、時々聞くことあるけど、何でしょう? ぜひ知ってもらいたい、話題のペット・ナット、わかりやすく解説してみたいと思います。
by Wine-Link
最終更新日:2024-04-26
目次
最近、ちまたで『ペット・ナット』って聞くことありませんか?何となく知ってるけど、いまいちはっきりしないところもあるな、という方もおられるのでは無いでしょうか?
このペット・ナット、なかなか面白いワインなんです。
いくつかに分けて解説していきますね。
ペット・ナットとは?
『ペット・ナット』とは、フランス語で『自然の微発泡ワイン』という意味である、ペティアン・ナチュール(Petillant Naturel)を略した名前。
どんなワインか、ざっくりと答えるなら、
『自然な製法で造られた、微発泡のワイン』
となります。
プロセッコやシャンパーニュ、カバなどと同じく、スパークリングワインの一種なのですが、他のものと比べてちょっと変わった造り方がされています。
まずは、その製法の説明に入る前に、一般的なスパークリングワインの製法をおさらいしておきましょう。
一般的なスパークリングワインの製法は?
では、一般的なスパークリングワインの製法をおさらいしてみましょう。
一般的なスパークリングワインは、まず、ブドウを収穫して来てアルコール醗酵させて、泡の無い普通のワインを造ります。
醗酵の際に酵母がブドウの糖分を消費し、アルコールと炭酸ガスを生み出しますが、醗酵の容器のふたを開けておくので、二酸化炭素は逃げていき、泡の無いワインができる訳です。
次に、そのできあがった泡の無いワインに、新たに酵母と糖分を加えて、もう一度醗酵させます。そして今回は、発生してくる二酸化炭素を逃がさないよう、ふたをしておくことで、泡をワインに閉じ込めます。
閉じ込められた泡は液体の中で留まり、スパークリングワインとなります。
ペット・ナットの製法は?
それに対して、ペット・ナットの製法はどうでしょう。
ペット・ナットを造る際は、ブドウを収穫して来てアルコール醗酵させますが、醗酵が終わりきる前に瓶に移し、栓をしてしまいます。
瓶の中でワインは醗酵を続け、アルコールと二酸化炭素が生じます。その二酸化炭素は、栓がされていることでワインの中に閉じ込められ、泡のあるワインになります。
結果、一般的なスパークリングワインが二段階に分けて醗酵を行っているのと違って、一段階の醗酵で、アルコールと泡が造られるのです。
泡が弱めなのはなぜ?
ペット・ナットの特徴のひとつ、泡は弱めです。
一般的なスパークリングワインは5〜6気圧ぐらいあります。いわゆる、しっかりとした泡です。
一度泡の無いワインというベースを造って、そこに、適量の酵母と糖分を用意して、あらためて泡を造る為の醗酵をさせてあげるので、しっかりとした泡を造ることができます。
それに対して、ペット・ナットは収穫してきたブドウを醗酵させ、途中からふたをして二酸化炭素を閉じ込めるので、泡は弱めになります。
造りによってばらつきはありますが1〜3気圧位と優しめです。
写真:グラスは普通のワイングラスを使うかな
自然な製法とは?
ペット・ナットは自然な農法で造られている、と言いましたが、いわゆる、『ナチュラル・ワイン』のカテゴリーのワインでもあります。
極力手を加えず、極力自然に造られたワインなのです。
その自然に造られた、という点を少しみていきます。
自然な製法:野生酵母を使う
一つ目が、野生酵母を使って醗酵させることが多い、という点。
野生酵母を使うということは、一般的なワインの造り方である、培養された酵母を用意して、添加するのではなく、ブドウの果皮、もしくは醸造所に住んでいる酵母を利用して醗酵を行う、ということです。
野生酵母を利用することで、培養された酵母よりも、劣化を生じさせるリスクも増えますが、様々なタイプをより多く含む野生酵母を利用することで、コントロールされていない、幅のある味わいを求めるのでしょう。
自然な製法:糖分を添加しない
二つ目が、糖分を添加しない、という点です。
先ほどの説明の中にあったように、醗酵は2段階に分けず、ブドウが持つ糖分のみを使ってのアルコール醗酵しか行わずにワインを仕上げるので、二度目のアルコール醗酵の為の糖分添加を行わずにすみます。
また、通常のスパークリングワインは瓶詰め直前に少量の糖分を足して調整することが多いのですが、この糖分の添加も行いません。
そういった訳で、自然のブドウ由来の優しい甘さが感じられるタイプが主となりますね。
底に澱がある?にごってる?
ペット・ナットは、澱が底にたまっていたり、にごりがあったりします。
一般的なワインもスパークリングワインも、醸造の終わり頃の工程で、澱を取り除く作業や、フィルターをかけたりする作業をする為、澱の無い状態で出荷されます。
それに対し、ペット・ナットは醗酵の進んでいる途中で瓶詰めをしてしまった後は、ワインに直接手を加えません。
その為、生じてくる澱が取り除かれる工程が無いので、澱が底にたまっていたり、にごりがあるワインになります。
写真:↑底に澱がたまっている
澱を取り除き澄み切ったワインは、管理された、クリーンな味わいになる、という良さがあります。
それに対し、瓶の底に澱の残ったペット・ナットは、澱からうまみ・味わいがワインに溶け込んでいくので、一般的にふくよかさのある味わいとなります。
↑澱が底にたまり、ワインはクリアな状態でも
注ぐために何度もボトルを動かすと
↑澱が舞いあがり、こんな風にワインがにごってきたりします
ちなみに、筆者は気分的に盛り上がります
ペット・ナットは新しいワインなの?
ペット・ナットは、この10年程でよく聞くようになったワインな感じ(筆者独自の肌感で)ですが、全く新しい製法のワインという訳ではありません。
遠い昔にさかのぼると、シャンパーニュなどの二段階の醗酵の方法が確立される前には、このペット・ナットのように一段階で泡のワインが造られていたという資料が見つかっています。
また、シャンパーニュのような二段階の醗酵の方法が確立されてからも、ペット・ナットのような製法が、場所によって継続して行われてきました。
フランスでは、フランス語で『田舎の製法』という意味の、『メトード・リュラル』(または、『メトード・アンセストラル』)と呼ばれ、フランスの南部を中心に造られてきました。
『ペット・ナット』は、『メトード・リュラル』と一緒の製法で造られていますが、ナチュラル・ワイン的な特徴も強いので、『メトード・リュラル』とは、別のカテゴリーのワインとして確立されています。
そういう意味では、新しいジャンルのワインです。
どこで造られている?
例えば、『カバ』だったらスペイン、『プロセッコ』だったらイタリア北部と決まっていますが、ペット・ナットはどこで造られているのでしょうか?
実は、ペット・ナットには、決まった産地はありません。
ペット・ナットの名のもと、造り始められたのは、フランスのロワール地方と言われていますが、現在、その造り方、考え方に共感した生産者が、世界中で造っています。
あえて言うなら、ニュージーランド、オーストラリア、アメリカ、ドイツ、南アフリカ、フランス、日本など、ワイン造りの規定がかっちり決められていない、新しい動きが起こしやすい産地で造られることが多いですね。
色やボトルの特徴は?
ペット・ナットは使うブドウ品種も自由ですから、各生産者が決めた、様々な品種で造られています。
そして色の規定もありません。使うブドウが白ブドウ中心なら、白からオレンジの色のワイン、黒ブドウ中心なら、ロゼから赤の色あいのペット・ナットが造られます。
瓶はなで肩で、透明のものが主流で、たいていは、栓は王冠です。王冠なので、ワインオープナーが要りません。
筆者は、飲んで余った際は、栓抜きの後ろで王冠を叩いて、はめ直して保管しています。
まとめ
ペット・ナットはどんなワインかとあらためてまとめると、
-泡は弱め
-極力手をかけず、自然に造られている
-底に澱がたまっていたり、にごりがあったりする
-栓は王冠が多し
-なで肩の瓶多し
-すっきりより、味わい深いもの多し
このような感じです。
古くて新しい、何だかワクワクする味わい、ぜひ、お試しください。
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