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『ニューワールドのワイン』とは?新しい世界のワインってどこのワイン?
ワインの話をしていると、「ニューワールドのワイン」という用語が出てくる時があります。 「ニューワールド」=「新しい世界」というのは分かりますが、一体何を指すのでしょう?
by Wine-Link
最終更新日:2024-05-13
目次
ニューワールドのワインとは
まず、まとめから先に言うと、
『ニューワールドのワイン』とは、
『アメリカ、チリ、アルゼンチン、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、
(+カナダ、日本、中国、インド)などの国で造られるワイン』
のことです。
ニューワールドのワインの始まり
ワインはもともと、ヨーロッパの国々を中心に造られてきました。
それが大航海時代の動きに伴って、ヨーロッパから他の地域へ、ワイン造りも伝来していきました。今から、大体200〜400年程前の話ですね。
そうして、新しくワイン造りを始めた国々を、『ニューワールド』、『新世界』などと呼び、そこで造られるワインは、『ニューワールドのワイン』と呼ばれるようになったのです。
比較として話す時は、『ニューワールド』に対し、ヨーロッパの昔ながらのワイン造りの国々は、『オールドワールド』、『旧世界』と呼ばれます。
ヨーロッパのワインに対して、『ニューワールドのワイン』とわざわざ分類されたのには、理由があります。
ニューワールドのワインは、従来のヨーロッパで造られていたワインとは2つの点で違っていたからです。
ニューワールドのワインが違っていた点 その1
ひとつめが、天候に恵まれ、味わいが違っていた点です。
チリ、アメリカ、南アフリカなどの新しい産地の多くは、例外はありますが、晴れの日が多く、気温が高く、雨が少なかったのです。
結果、ブドウは完熟し、完熟ブドウで造られたワインは、果実味が強く、糖度、アルコール度数がしっかりしていて、凝縮感のあるスタイルのものが多かったのです。
ヨーロッパの国々はワイン造りに適した場所を選んで造られていたにしても、そこまで天候的には恵まれていませんでした。
その為、今までのワインに比べ、ニューワールドのはっきりとした味わいは、新しいスタイルだったのです。
写真:年間300日晴れの所もある
ニューワールドのワインが違っていた点 その2
ふたつめが、ニューワールドのワインは、『新しく、自由だった』点です。
歴史が浅いニューワールドの国々では、伝統にとらわれることなく、新しい技術をどんどん取り入れられていきました。
ヨーロッパの国々ではワイン法が確立されていて、ルール上、新しい技術を思いついても使えない事も多かったのです。
ブドウ品種のセレクトも、とても自由でした。ヨーロッパの国々では、ワイン法で産地ごとに使える品種が決まっていたのに対し、新しい国々では、まだ決まりがない中で急速に発展していったので、生産者達が自由に品種を選びました。
市場で人気のある品種、目新しい品種に積極的に挑戦し、その中から産地に合った品種が広がっていきました。
また、ヨーロッパは基本、何種類かの品種をブレンドする事が多いのですが、ニューワールドでは、単一のブドウ品種のワインが中心でした。そして、『カベルネ・ソーヴィニヨン』などのように、品種の名前をラベルに大きく打ち出して販売したのが、消費者にとって分かりやすく、市場で人気が出てきました。
当初はレベルが低く見られた
しかしながら、どの業界でも新参者への風当たりという問題がありますが、ワインの世界も同じで、当初、『ニューワールドのワイン』は、レベルが低く見られていました。
「ニューワールドのワインだろ」と、余りポジティブでない意味合いで呼ばれる事も多かったのです。
実際、質の高いものも多かったけれど、ヨーロッパのワインに比べて、複雑味に欠けていて、濃いだけのワインだ、と評価されたり、大手メーカーによる飲みやすい安価なもの、が多かったり、というのも事実です。
ニューワールドのワインの位置づけを大きく変えた大事件
そんな世間の目を大きく変える大事件が1976年に起こりました。
『パリスの審判』です。
世間に「ワインの本場、ヨーロッパにニューワールドのワインがかなう訳がない」と思われていたそんな時代に、トップジャーナリスト達によるカリフォルニアワインVSフランスワインのブラインドテイスティングが行われ、世間の予想を覆し、カリフォルニアワインが圧勝したのです。
この事件をきっかけにカリフォルニアワインだけではなく、ニューワールドのワイン全般に対する世間の評価は上がっていきました。
写真:『パリスの審判』は書籍に取り上げられている
その後のニューワールドのワイン
事件後、ニューワールドへの評価は徐々に上がっていきましたが、2000年頃までは、「でも、やっぱり、ニューワールドのワインはニューワールドのワインだ」と、区別されていたのは否めません。
しかし、近年になってきて、品質が上がってきているだけでなく、冷涼な産地を選んだり、気温の低い明け方に収穫する、など、収穫・醸造の方法を試行錯誤したりする事で、いわゆる、ヨーロッパスタイルの『冷涼スタイル』のワインも多く造られ、スタイルの差が減ってきています。
写真:各地で冷涼な産地が探し求められている
『ニューワールドのワイン』という呼び名はもう要らない?
ワインの発祥を含めると、ヨーロッパのワイン造りは、紀元前にさえさかのぼりますが、ニューワールドのワイン造りは200〜400年程の歴史です。
その比較だけすると、ニューワールドはまだまだ新しいなあ、となるのですが、ここ50年ほどの栽培・醸造の技術の発達は目ざましいです。
逆に、ヨーロッパの産地の中には、ワイン法の足かせもあり、技術の進化が緩やかな所もあります。
また、温暖化により、ヨーロッパのワインの産地の気温も上がり、ブドウの糖度が上がり、結果、以前より平均的にアルコール度数が上昇し、ボリュームのしっかりしたものが増えています。
という訳で、ニューワールドのワインとそれ以外の国々のワインと分ける必要があるのか?という段階に来ているように感じます。
例えば、冷涼な地域の高い技術を持って造られたチリのワインと、技術の発展が緩やかで、温暖な地域のフランスのワインを比較した時に、わざわざそのチリのワインを『ニューワールドのワイン』と区別する名称で呼ぶ必要はないだろう、という訳です。
また、旧世界にも、新しい動きのある地区もあるので、そういった地域も、『ニューワールド』と呼んだり、『ニューリージョン』などと呼んだりしたくなりますね。
写真:様々な試行錯誤がなされている
まとめ
繰り返しになりますが、『ニューワールドのワイン』とは、
『アメリカ、チリ、アルゼンチン、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、
(+カナダ、日本、中国、インド)などの国で造られるワイン』
のことでした。
取り上げておいてあれなんですが、ニューワールドのワインと旧世界のワインの垣根が低くなりつつある為、今後は使われる頻度が減っていく単語なのかもしれません。
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