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チーズとワインと、予定外の夜の話
テレビが壊れた夜、 予定外の楽しさと、チーズとワインが残った。
by Wine-Link
最終更新日:2026-01-30
それは、突然やってくる
夕方、リビングの43インチのテレビが突然映らなくなった。
音は出ているのに、映像がなく、うっすら明かりだけが残った画面。
ラジオとしては使えるけど、
テレビはラジオではない。
コンセントを抜き差ししても反応はなく、
今日は昼間から、少しだけバタつくことが続いていた。
「よりによって今日か」と小さくため息が出る。
仕方がないので、寝室に置いてあった古い26インチのテレビを引っ張り出してきた。
画面は小さく、画質もいまひとつだけど、映るだけ一安心。
その晩のこと
その晩、こたつに入ってテレビを眺めているうちに、妙な感覚になった。
あ、これ、あれだ。
まるで、ビジネスホテルの部屋で一人くつろいでいるみたいなんだ。
このテレビのサイズ感が、完全に“ビジネスホテル感”をかもし出している。
子どもが寝静まったあとの夜に、
ようやく手に入る、私だけのテレビ時間。
テレビが小さくなっただけなのに、
部屋が少し広く感じる。
何か、つまみますか
冷蔵庫を開けると、昨日ふと買ったゴルゴンゾーラ・ピカンテがあった。
半分残っていたりんごを切って、チーズと一緒にお皿にのせるだけ。
それで、もうご機嫌です。
ワインは、ストックにあった2017年のカナダのアイスワイン。
ゴルゴンゾーラ・ピカンテの塩気には、甘みのあるワインが合いそうだと思ったから。
量はほんの少し、のはずでしたよ。
夜遅くに飲むなら、そのくらいがいいですから。
ゴルゴンゾーラ・ピカンテのピリッとした刺激は、
フルーツの甘みと合わさると、驚くほどやさしく。
そこにアイスワインの凝縮した甘さと酸。
ひと口ごとに、味がほどけていく。
ゴルゴンゾーラ・ピカンテとアイスワインは、味わいとしては真逆。
でも、その対極があるからこそ、どちらも無理なく引き立つ。
難しく考えなくても、
ただ、「美味しいな」と感じられる魔法の組み合わせ。
いったい、誰が最初に思いついたんだろう。
Netflixを流しながら、
画面を見ている時間と、見ていない時間が、ゆるやかに混ざり合う。
チーズをひとかけら。
ワインをひと口。
誰かのためじゃなく、
自分のペースで味わう夜。
そういえば、グラスが
そういえば、先日いちばん重宝していたリーデルのワイングラスが、
ステムの部分で割れてしまった。
捨てるのは忍びなくて、
残った上の部分をマグカップに入れて使っている。
見た目は少し笑えるけれど、
言うまでもなくワインはちゃんと美味しい。
思えば、仕事を始めた頃から、
一人で泊まるビジネスホテルは、なんだかワクワクする場所だった。
最低限必要なものだけが揃っていて、
思考を妨げる余計なものがない。
画面は小さくなり、
グラスも本来の形ではないけれど、
かなり満足。
こんな夜も悪くない
テレビはいずれ買い替えるし、
グラスも、また新しいものを迎える。
でも、予定外になったことで、
ふと楽しい余韻が残った。
そして、まあ、私らしい。
こんな夜に、
チーズとワインがあれば、もう贅沢だ。
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