高いワインは何故高いのか?

変なタイトルですが、たまに「高いワインは何が違うのか?」という質問を受けるので、改めて考えてみます。

by Wine-Link

最終更新日:2022-10-18


ワイン関連の仕事をしている私が、時々友人から聞かれる質問のひとつがこれ、「高いワインは何が違うの?」です。テレビで取り上げられるワインを見ていると価格の幅が大きいから、疑問が生じてくるのかもしれません。

「高いメロンは何が違うの?」だったら、「糖度が高い」、「栽培に手のかかる品種である」、「実のプレゼンとパッケージが贈答用だから」とか、そんな感じでしょうか。

高いワインの理由に関して当てはめると、「原料のブドウが手のかかる品種である」、「醸造に手間がかかる」という感じになりますが、加えてもう少し理由がありそうですので、探ってみたいと思います。





高い理由① ブドウの収穫量の違い

1点目は、ワインの原料となるブドウが多く収穫できるかどうか、で価格が変わってきます。

(※以降、どれ位ブドウが収穫できるか、つまり一定の面積で収穫されるブドウの重量の事を『収量』と呼びます。)

同じ面積の畑でブドウを栽培していても、収量が低い畑は収量が高い畑に比べて、原材料のブドウの単価が上がってしまいますね。その原材料の価格差がワインの価格に反映されます。


写真:タワーより畑を眺める(Chateau Gruaud Larose)



収量が変わる理由はいくつかあります。

 ▷ 同じ面積に植えているブドウの樹の本数の多い or 少ない

 ▷ 質の高いブドウを作る為、あえて成長する途中で実を間引いて減らしている

 ▷ 1本の樹当たりの実る房の多い品種と少ない品種がある
  

「みんな収量が高くなるように変えていったらいいじゃないか?」と意見が出そうですが、収量が低くなる、というデメリットがあったとしても、「ブドウの質の為に植える本数にこだわりたい」、「ひと房当たりの凝縮度を上げたい」、「この土地にはどうしてもこの品種が適している」等、収量より質の向上を考えている訳ですね。


高い理由② 栽培方法の違い

2点目ですが栽培方法、栽培環境によってもブドウ栽培のコストが変わり、ワインの価格に反映されます。

この例としていくつか挙げてみます。

 ▷ 有機栽培を実践している
  
 ▷ 激しい斜面で農作業に機械が入れず、全て手作業

 ▷ 収穫が機械摘みでは無く、手摘み

 ▷ 病疫が発生しやすい為、様々な手入れが必要


一つ目の有機栽培は、有機栽培自体も手間とコストがかかる事が多いですが、認証団体の認証を得るとなると、規定を満たす為の作業を行う、申請の書類を準備する、などの仕事が必要となりますから更にコストがかかりますね。

写真:馬とトラクターとではどちらがコストがかかるだろうか?(Chateau Latour)



そして、二つ目の点の例として、ドイツのライン川流域には急な斜面に位置する畑がありますが、機械が全く入れず全ての作業を人の手で行っています。転落の危険性さえあると言います。そういった畑では、同じ収穫高当たりのコストが上がり、値段にも反映されているでしょう。


また、収穫に関してですが、フランスのボルドーなどのように栽培面積が広い為、収穫時に臨時で収穫スタッフを雇う産地があります。その際の収穫スタッフへのバイト代はもちろんですが、加えて食事代、遠方のスタッフには宿泊代を支払う必要があります。

雨が降る前かつ最高の熟度のタイミングで収穫をしようとすると収穫スタッフが待機する日も出てきます。場合によってはその日の支払いもしなくてはいけません。これもコストに乗ってきます。

「あー、メルローの収穫をあと1日待ちたいが、コスト的に厳しいので今日収穫してしまうしか無いな。」という妥協する時もあると、筆者は思っています。


コストが上がる話ばかりしていたら何だか気分が沈みがちになってきましたが、続けます。




高い理由③ 熟成方法の違い

3点目は熟成方法の違いが価格に関係してきます。フレッシュな白ワインは基本熟成をさせませんから、それ以外のワインに関してですね。

しっかりとした白ワイン、赤ワイン全般は味わいをまろやかにさせたり、風味を豊かにさせたりする為、オーク樽で寝かせる事が多いのですが、ブドウの品質が高ければ高いほど、長く寝かせたり作用の強い新しい樽を多く使ったりする事が多いです。品質に合った熟成を行う事で、ワインの質は高まります。

その際に使う樽の価格、樽で寝かせる期間、何年で樽を新しいものに交換するか、衛生に保つ為の作業、この辺でコストが変わってきます。


写真:ピカピカの新樽(Chateau Durfort Vivens)

高い理由④ 地価、人件費の違い

4点目は畑の地価、作業スタッフの人件費の違いです。ロマンの無い話になってきましたね。

東京で畑を始めるのと、地方で畑を始めるのでは必要な資金が大きく変わりますね。そんな感じで、年々地価が高騰している銘醸地、フランスのブルゴーニュ地方で畑を買うには桁外れな金額を用意する必要があるそうです。

地価は、代々ワイン造りを行ってきた生産者の相続税の額にも影響を与えます。相続税が払えずに手放す生産者もいると聞きます。

人件費の点においても、労働者への賃金の水準は国によって大きな違いがありますね。この辺も価格に大きく影響を与えます。

1点目から4点目の理由は、ひとつずつでは大きな差を生まなくても、蓄積すると大きな違いになります。例えば、地価、人件費の高い産地にて、有機栽培を実践し、1本の樹に実ったブドウを半分は途中で切り捨て、質の良い新しい樽で2年間熟成させたワインは結果、値段が高くなるのです。



高い理由⑤ プレミア度、レア度の違い

しかし、1から4の理由が蓄積されただけではお店のワインの値段は概して1万円を超えません。ワインの値段が5万、10万、100万となる多くの理由は最後の5点目です。

5点目は、そのワインのプレミア度が高く、レア度が高い、という理由です。

伝統的な実績、評価誌による100点評価、マスメディアで取り上げられた、等の理由で人気が高まると、蔵出し価格も少しずつ上がる傾向にあります。生産量が少ない場合、更にその価格の上昇は顕著になります。

もちろん、人気の出たワインの造り手は、それに応じてセラーや畑に設備投資したりするので、コストが上がるのも事実ではあります。


写真:セラーに設備投資(Chateau Beychevelle)

写真:タワーに設備投資⁉(Chateau Gruaud Larose)



そういったプレミア度の高いワインとして、ロマネ・コンティや、オーパス・ワンなどが挙げられますが、ロマネ・コンティなどは栽培できる畑がきっちり定められており全く栽培面積は増やせないので、よりレア度が高く値段も上がりやすい訳です。

また、超プレミアワイン、プレミアワインの古酒になると、転売によって更に価格が上昇する事があります。

ワインが一度市場に出た後で、専門の売買業者が買い付けて販売したり、コレクターが放出したお宝ワインがオークションで販売されたりする事で価格が更に上がり、50万、100万というワインが出てくるのです。




まとめ

まとめますと、「高いワインは何故高いのか?」と聞かれたら、「1万円位までのワインは、畑当たり収穫されるブドウの量、栽培・熟成方法に違いがあったり、人件費・地価などのコストが違ったりする事で価格が変わる。50万、100万のワインになってくるとプレミア度、レア度が高いので市場原理で価格が上がっている。」、と答えると納得してもらえますでしょうか。

投稿者

  • やまくみ

    ・ソムリエエクセレンス(JSA認定)
    ・SAKE DIPLOMA(JSA認定)
    ・DIPLOMA LEVEL3(WSET認定)

    ワインの輸入商社にて、バイヤーを経験。
    退社後の現在は、ワインのなんでも屋を
    ちみちみとやっている。

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公開日 :
2022/10/17
更新日 :
2022/10/18
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