日本ワインが熱い! なぜ日本ワインは進化したのか?

世界が注目する日本ワイン。 山梨の甲州が最高賞を受賞し、長野や北海道でも質の高いワインが続々登場 ――その進化の理由とは?

by Wine-Link

最終更新日:2025-10-31

いま、日本ワインは世界から注目を集めています。


2024年には、世界的権威のデキャンター・ワールド・ワイン・アワードで、山梨産の甲州の白ワインが最高位の賞を受賞。

山梨だけでなく、長野や北海道でも個性豊かなワインが次々と登場しています。


日本でワイン造りは難しいと言われてきましたが、いったい何が日本ワインを進化させたのでしょうか?





日本では難しいとされてきた背景

日本でワイン造りが難しいとされてきた最大の理由は、ブドウ栽培に不向きな高温多湿の気候です。

梅雨や台風による多湿と長雨は、果実の裂果や病害を招きます。そのため、ヨーロッパのように秋晴れの中で完熟を待つことができません。さらに、山が多く平地が少ないため畑は狭く、機械化も難しい ―― 安定したブドウ栽培は容易ではなかったのです。

加えて、ブドウ造りとワイン造りが切り離されていたことも課題でした。日本にはもともと食用のブドウ栽培が浸透していたため、ワインの生産者は食用ブドウを購入してワインを造るケースが多く、果実の凝縮度や味わいがワイン向きではないこともありました。

制度の面でも問題がありました。輸入ブドウや濃縮果汁を使ったワインでも「国産」と表示できたため、国産ブドウ100%で造られたワインの努力や個性が評価されにくかったのです。(「え、そんなワインが国産と呼ばれていたの?」と驚く人も多いのでは。)

こうした気候・地形・制度の壁が重なり、日本のワイン造りは長く「挑戦」と見なされてきたのですが、そこからどうやってワイン造りが進化を遂げたのでしょうか?


写真:現在も日本ワインの中心は山梨である

ブドウ栽培の進化

一つ目の大きな変化は、ワイン生産者自身による自社畑でのブドウ栽培が本格化したことです。

2000年以降、『ワインを畑から造る』という考えのもと、自分で畑を持ち、ブドウ栽培を始める生産者が増えました。

彼らは、日本の土壌や気候に適した品種やクローンを研究し、栽培密度や剪定方法を工夫。北海道では冷涼な気候に適したピノ・ノワールやケルナーを選定し、山梨では甲州を従来の棚仕立てから垣根仕立てに変更することで、果実の凝縮度や品質を高めました。

こうして、日本の風土に合ったワイン用ブドウが安定して育つ環境が整いはじめたのです。





写真:垣根仕立て

醸造技術の飛躍的向上

二つ目の変化は、ワイン醸造を専門的に学ぶ若手醸造家の増加です。かつては家業としてワイン造りを継ぐ人が中心でしたが、近年は大学や専門学校で醸造を学び、海外で経験を積んだ新世代が増えました。

フランス・ブルゴーニュやボルドー、ニュージーランドで研修した彼らは、低温醗酵や、樽・酵母の使い分け方、区画ごとの仕込みなど、最新技術を日本に持ち帰り、各地で実践しています。

こうして日本のワインは、『ワインを造る』という段階から、『畑の個性を表現する』という次のステージへと進化しました。





産地の多様性と個性化

かつては山梨が圧倒的中心でしたが、近年は北海道や長野、山形などにも産地が広がり、それぞれの地域に合わせた個性が生まれています。

北海道では冷涼な気候を生かし、ドイツ系の品種を用いた酸のきれいなワインが登場、長野では標高の高さを生かし、バランスの取れたワインが造られています。

こうして「どこで造るのか」に合わせて方向性を定め、地域ごとの個性を尊重する『テロワール文化』が根付いたのです。平地が少なく畑が狭い日本の特性は、多様な個性を持つワインを生む利点へ変わりました。




写真:様々な系の品種が試されている

制度の整備も後押し

近年の法制度の整備も、日本ワインの発展を支えました。特に大きかったのが『日本ワインの定義』と『GI制度』の明確化です。

2015年に国税庁が定めたルールでは、『日本ワイン』は国内産ブドウ100%使用で醸造されたワインのみと定義されました。輸入果汁で造られたワインは『国内製造ワイン』と区別され、本物志向の生産者の努力が正当に評価されるようになったのです。

 『国産ワイン』  →  『日本ワイン』
          →  『国内製造ワイン』

さらに、地理的表示(GI)制度により、山梨、長野、北海道などの地域名を品質保証として表示できるようになり、産地の品質も高まりました。



写真:『国産ワイン』から2つに分類された

まとめ

こうして日本ワインは、気候や地形、制度の壁を乗り越えて大きく進化しました。自らの畑でブドウを育て、醸造技術を磨き、地域の個性を尊重することで、日本ならではの繊細で表現力豊かなワインが生まれています。

風土が適さないからワインは無理と言われてきた『挑戦の地』が『可能性の地』へと変わりました。
日本ワインのさらなる深化が楽しみです。


次にワインを選ぶときは、ぜひ『日本生まれ』の1本を手に取ってみませんか。





投稿者

  • 山崎 久美子

    ・ソムリエエクセレンス(JSA認定)
    ・SAKE DIPLOMA(JSA認定)
    ・DIPLOMA LEVEL3(WSET認定)

    ワインの輸入商社にて、バイヤーを経験。
    現在は、ワインのなんでも屋。

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公開日 :
2025/10/31
更新日 :
2025/10/31
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