地球の裏側と言われるチリへ!
前回の記事でチリ・アルゼンチンのだいたいのイメージをお持ちいただけたとよいのですが、いかがでしたでしょうか?
私は今回の訪問でただ観光していたわけでなく、ワイナリーへ行ってしっかり仕事もしてきました(汗)。
今回はチリの注目ワイン産地と生産者をご紹介させていただきます!
生産者『クロ・デ・フ』のセラー内部。 100年以上も前に創設された醸造研究所の施設を間借りしているようです。
読者の皆様はチリワインにどのようなイメージをお持ちでしょうか?チリワインは2015年、フランスを抜いて日本の輸入量で遂に一位となりました。安価で親しみやすく美味しいワインが沢山あるイメージではないでしょうか?私自身もチリを訪れる前は「コストパフォーマンス重視で財布に優しいワイン」という印象でした。
しかし南北に4,000㎞もあるチリは北と南で気候が変わりますし、もちろんブドウ畑を取り巻くテロワールも全く以って変わっていきます(縦長な国なので本当に移動が大変でした…)。南半球にある国ですから、私が出発した日本の初夏での現地は秋から冬になる時期。南米とはいえ「常夏」ではなく、冬はマイナスまで気温が下がります。
産地ごとに様々な表情のあるチリのワイン事情ですが、現在、最も注目されている産地はここ『イタタ・ヴァレー』です!
説明するより、写真でご覧いただきましょう。世界のいろんなブドウ畑を見てきた私も、こんなに強烈な個性を持った畑を見たのは初めて!!
一見ただの「荒れた空き地」のような景色ですが、実はこの地面に這いつくばっている枝が全部ブドウの樹。超低木に仕立てられた(ゴブレ方式といいます)カリニャン種とミュスカ種の混植。樹齢は推定120~200年もある、古木の畑です。これらが灌漑を施されず、無農薬で栽培されているのです。
聞けばイタタ・ヴァレーのあるチリ南部はかつて凄く貧しい地域だったようで、農薬を買うお金もなく、植樹した当時の状態が今でも畑に残っているようです。
ただブドウにとっては人の手があまり介入されないまま樹齢が上がり、高品質なワインが生産できるようになった。そこにチリの栽培家・醸造家をはじめ、評論家ジャンシス・ロビンソン氏など世界中のワインのプロが熱い視線を注いでいます。
イタタのワインはヨーロッパ産ワインのようなエレガンスが前面に出ています。
口当たり良く、少しスパイス感が加わり、フランスのブルゴーニュや北ローヌのようなニュアンスを彷彿とさせます。
このイタタ・ヴァレーで現在、トップを走るのが「テロワリスト」※こと、ペドロ・パッラ氏です。
イタタ・ヴァレー近くにあるコンスタンシアという町の出身の同氏は、フランスでブドウの栽培学や地質学を学び、パリ国立農業研究所で博士号(2001~04年)を取得します。その後も地質学、地表学、土壌の研究を更に続けていきました。(※テロワールに特別なこだわりをもつ人のこと。造語です)
一旦チリへ帰国しますが、ブルゴーニュのワインに魅せられたパッラ氏はフランスで更に経験を積みます。そして遂に地元(コンスタンシア周辺)がとてもユニークで魅力的な土壌に恵まれていることを発見し、この地でブルゴーニュに対等するようなワインを造る決意をして帰国します。
栽培・地質のスペシャリストとして認められる彼は、今やワイン専門各誌で特集が組まれ世界が注目する生産者として名を馳せています。
ワインの生産現場でコンサルタントとして活躍していたペドロ・パッラ氏ですが、遂に自らプロデュースするようになったワイナリーが「クロ・デ・フ」です。
訪問した私は現在リリースされているフルラインナップのワインを試飲させて頂きました。
イタタを含む冷涼地域で栽培されたピノ・ノワール種を始め、カリニャン種を中心としたワインなど様々なタイプのワインが造られています。
すべてのワインに共通して見られた特徴はフランスワインのようなエレガンスです。
チリ = 濃くて、強い果実の味わい
というイメージを払拭するほどクリーンで、じゅわっと染み渡るチャーミングな果実味と長い余韻が特徴です。
間違いなく、これがチリワインの最先端。私にとって有意義な訪問となりました。
チリ産はロー~ハイプライスのいずれのワインでも価格以上の品質のワインが手に入ります。
ワインショップに行かれた際にヨーロッパのワインだけでなく、是非ともチリ南部の冷涼な地域のワインを手に取って頂きたいと思います。
きっと新しい発見がありますよ!
これは興奮して写真を沢山撮ったパイスというブドウ品種の古木です。
さて、次回はアルゼンチンに移動してこれまた注目を集めているマルベック種の魅力に迫っていきたいと思います!