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テーマ別ワイン用語まとめ

解説ワイン用語:『古木』、『ヴィエイユ・ヴィーニュ』、『オールド・ヴァイン』

ワインの説明に時々出てくる、『古木』、ならびに、『古木』のフランス語表現、『Vieilles Vignes ヴィエイユ・ヴィーニュ』、英語の表現、『Old Vines オールド・ヴァイン』。これらは、どういう意味合いなのか、呼ぶのにルールがあるのか、などを、解説していきたいと思います。

『ヴィエイユ・ヴィーニュ』とは?

時々ワインの名前で見かける、『Vieilles Vignseヴィエイユ・ヴィーニュ』ですが、フランス語で、『ヴィエイユ 古い』+『ヴィーニュ 木』で、『古木』の事を意味します。

『古い木』、つまり、『樹齢の高いブドウの樹から収穫されたブドウを使っている』、という意味です。

ワインリストなどでは単に、『V.V.(ヴイ、ヴイ))と記載される事も多いです。

また、『ヴィエイユ・ヴィーニュ』という表現は、主にフランスで使われますが、英語圏では、『Old Vines オールド・ヴァイン』や、イタリアでは、『Vecchie Vigne ヴェッキエ・ヴィーニェ』と表記されたりします。(※ここからは、基本、『ヴィエイユ・ヴィーニュ』と呼びます。)

この『ヴィエイユ・ヴィーニュ』という表現に関して、具体的な樹齢の規定がある国は少なく、生産者が各自でどれ位の年数から名乗るかを判断しているのが現状です。

ですので、生産者によって、地域によって、ばらつきがあるのですが、概して、樹齢30年辺りから『ヴィエイユ・ヴィーニュ』と表記することが多いようです。


こんな風にラベルに記載されている

まずは、ブドウの樹のライフサイクル

ブドウは、植えてから数年経つと少しずつ実をつけ始めますが、まだ最初は、樹の中のエネルギーは樹自体が大きく成長するのに使われています。

植樹から7〜8年ほど経つと、樹としての成長が一段落し、実にエネルギーが十分届くようになります。その辺りから20年頃までが一番生産量が多くなると言われています。

その後、一般的にですが、樹齢20年を越した辺りから、少しずつ収穫量が落ちていきます。ブドウの樹の寿命は120年と言われており、それまで、少ないながらも実を毎年実らせます。

生産性を求める場合、枯れるまで栽培を続けるのではなく、生産量が落ち始める樹齢20〜30年辺りから、植え替えられる事が多いのです。

『古木』のブドウを使ったワインは、味わいがより凝縮され、複雑味が感じられるものが多いとされますが、それは、なぜなのでしょうか?


『ヴィエイユ・ヴィーニュ』のメリット①

まず、『ヴィエイユ・ヴィーニュ』の樹齢になってくると、できる実の数が減るのは効率の点からはデメリットですが、樹のエネルギーが少ない数に注がれる、つまり、ひと房に与えられる栄養が増える、という点ではメリットになります。

質を求める生産者は、沢山実ができても、品質を上げる為に『グリーンハーベスト』を行い、わざわざ数を減らしたりする訳ですが、『ヴィエイユ・ヴィーニュ』は、それを自然にバランスよくやってくれている事になります。


チリのカリニャンの古木

『ヴィエイユ・ヴィーニュ』のメリット②

樹齢の高い樹になればなるほど、その根は広く深く張りめぐらされていく、というのは身近に育っている他の樹木でも見かける事ですね。

ブドウも同じで、『ヴィエイユ・ヴィーニュ』になると、根は地中深く発展しています。深く広く根が広がっているという事は、適切な水分量の吸収が得やすい、というのもメリットですが、もうひとつ、根がより幅広い地層にアクセスできることで、様々な地層から栄養を吸収しやすく、実るブドウの実に複雑味が出やすい、というメリットがあります。

正直、色んな専門家の説があり、土壌のタイプはブドウの味わいに影響されない、という説もありますが、『ヴィエイユ・ヴィーニュ』のワインを造り続けている生産者達が経験上感じてきた事は無視できないと思います。


『ヴィエイユ・ヴィーニュ』のメリット③

最後のこの点は、補足的なものですが、樹々がより長く枯れずに成長を続けていく為には、成長に適した恵まれた条件である事が必要です。

という事は、『ヴィエイユ・ヴィーニュ』の中でも高めの樹齢まで育っている樹々は、恵まれたテロワールにある、という事であり、収穫されるブドウの実は恵まれた条件のもと栽培された、といえるでしょう。

『古木』が規定になっている産地①

最初に、『古木』は規定に無い、と書きましたが、例外はあります。

比較的ワイン造りの歴史は浅いオーストラリアですが、南オーストラリア州などは、『フィロキセラ』の害を受けずにすんだ為、樹齢の高い樹が広く残っています。

その中でも、銘醸地バロッサ・ヴァレーで、2009年、その古木を区分・登録する事で保存、維持していこうとする、『バロッサ・オールド・ヴァイン・チャーター(バロッサ古木憲章)』が制定されました。

その憲章の中で、下記のように樹齢に従って畑を区分しました。実際に、ワイン名に記載している生産者も出てきています。

▷ Barossa Old Vine
   バロッサ・オールド・ヴァイン…樹齢35年以上
▷ Barossa Survivor Vine
   バロッサ・サヴァイヴァー・ヴァイン…樹齢70年以上
▷ Barossa Centenarian Vine
   バロッサ・センテナリアン・ヴァイン…樹齢100年以上
▷ Barossa Ancestor Vine
  バロッサ・アンセスター・ヴァイン…樹齢125年以上

一番古いものは、1843年に植えられたシラーズの樹、つまり、樹齢179年の樹、だそうです。地域をあげて、産地の特性を守っていこう、という動きは素晴らしいですね。

『古木』が規定になっている産地②

『古木』が規定になっている次の例が、南アフリカ共和国です。

南アフリカでは、2018年、古木の畑を保護していこうという活動を行ってきた、『Old Vine Project (OVP) オールド・ヴァイン・プロジェクト』が、樹齢35年以上と認定した畑で収穫されたブドウで造ったワインに、植樹の年度を記したシールの運用を始めました。

このOVPに所属しているメンバーだけの運用ではありますが、消費者へのアピールとして分かりやすいものであり、今後の広がりを期待したいです。


『古木』が規定になっている産地③

スペインにも、『古木』の樹齢が規定になっている例があります。

スペインの北東、カタルーニャ州にある、銘醸地『プリオラート』ですが、『Velles Vinyes ベリャス・ビーニャス(=古木畑)』という表示をする為には、樹齢75年以上、または、1945年以前に植樹されたブドウの樹と認められる必要がある、という規定があります。

ちなみに、2009年の新格付けには、収量、使用品種に加えて、最低樹齢も含まれています。

樹齢の高い『古木』が容易な産地、難しい産地

ちなみに、更に樹齢の高い『古木』になると、その樹齢まで栽培していくのが、容易な地域と、難しい地域はあります。

先ほど紹介した、南アフリカにしても、バロッサ・ヴァレーにしても、比較的、乾燥しており気候に恵まれた地域です。そういった地域の方が、ブドウの樹が長く健全に生育できる、というのがあります。

その点、雨量が多く病疫に気を配る必要のあるフランス、ボルドー地方や、日照量が多くないドイツでは、50〜100年のような樹齢の高い古木は容易では無いでしょう。

また、あまり夢の無い、現実的な話ですが、土地の単価が高い地域に関しては、収量の低い古木を長く置いておきにくい、というのはあると思います。

もともと銘醸地であるのに、人気が年々高騰しているフランス、シャンパーニュ地方やブルゴーニュ地方などは、土地単価も高いので、極端な古木に比重を置くメリットは低くなります。


まとめ

『古木』のブドウを使ったワイン、『ヴィエイユ・ヴィーニュ』、『オールド・ヴァイン』の表記のあるワインは、味わいがより凝縮され、複雑味が感じられるものが多いです。

その樹齢に対し、大部分は、生産者が自主的に判断していますが、新しく規定を作る動きも見られます。