2022-11-09

ブドウ栽培にまつわる用語

ワインの原料はブドウだけですが、そのブドウは多くの場合ワインの生産者が理想のワインを造るべく自分達の畑で栽培しています。

ブドウ栽培の作業の中には普段聞きなれない単語もありますが、今回はそんな栽培にまつわる用語を解説しながら、ブドウが収穫されるまでの1年を見て行きたいと思います。

ブドウは自然に生えている樹から収穫するのではなく、苗木が畑に植えられて栽培が始まります。

ブドウは種で増やしてしまうと別の種となってしまうため、種から育てることはありません。接ぎ木や挿し木、といった方法が取られます。植えられた苗木は2〜3年ほどすると実をつけるようになります。




植樹の際、どれぐらいの間隔で樹を植えているか、というのは『株密度 density』で説明されます。『株密度』は一定の面積に植えられているブドウの樹の本数で表し、1ヘクタール当たり何本(〇〇本/ha)という表記が主流です。

株密度が上がると機械が入りにくく作業がしにくい、風通しが悪くなり衛生的なトラブルを生みやすいというデメリットはある一方、樹同士が成長を競い合うので、根が地中深くに張りやすかったり、品質が上がったりするという利点がある、という意見もあります。

ブドウは冬に休眠期を迎えますが、その頃には葉っぱは全て落ちてしまっていて、地上には枝と蔓が残るばかりです。その期間に、理想とする実のなり方に合わせて、枝を切り詰めていきます。この作業を、『剪定 Pruning』と言います。


この『剪定』は必要に応じて夏にも行うこともあるため、冬の剪定は『冬季剪定』、夏は『夏季剪定』と分けて表現する時もあります。

それぞれの生産者の仕立てる方法によって剪定の仕方、切り詰める程度が変わります。

春になると休眠していた樹々に『芽吹きDebourrement, Budburst』が訪れます。『芽が吹く』、つまり春になり温度が上昇し、眠っていた樹々から芽が出てきます。北半球だったら3~4月頃の事です。

出てきた芽は最初、薄ピンクがかっていて小さな角のような形をしています。


そして、芽が開いていき、葉となり日が経つにつれ小さかった葉が大きく広がっていきます。

この葉が大きくなり、茎や蔓を伴って葉の枚数も増えていくことを『展葉  Feuillaison』と言います。


展葉し、育っていく樹々に病疫が見つかったら、それに対しての対処の手入れは必要ですが、健全に育っている樹々にも手入れが行われます。

ブドウの実の衛生状態や生育のため、ブドウ房の周りの葉を取り除いたり、ブドウの生育に適切なバランスを目指し樹勢をコントロールしたりするのですが、その事を、『キャノピーマネージメント Canopy management』と言います。

1960年代にアメリカで提唱され始め、そこから各国に広がったと言われています。

初夏にさしかかった頃、北半球だと6月位に『開花 Feuillaison』が始まります。花と言っても、緑色の実の元となる部分(子房)に白い雄しべと雌しべと緑色の花弁が付いた、とても小さな花で、よく見ないと花だと分からない形状をしています。


そして、受粉が上手くいくと『結実』して、実が出来てきます。


雨や風、気温などの要因によって受粉が上手くいかないこともありますが、そのことを『花振るい Coulure』と言います。適切に受粉、結実が出来ないままに、花が落ちてしまいます。

また、開花したけれども、天候や栄養状態などが原因で、結実が起こらない、もしくは、一部肥大せずに小粒のままになることを『結実不良』、フランス語では『Millerandage(ミルランダージュ)』と言います。

『結実不良』と言うとネガティブな意味合いが強いのですが、生産者にとってこの『ミルランダージュ』は、ブドウの房の粒と粒の間が空き通気性が良くなることや、果汁に対して皮が厚くなること、などの理由でポジティブに捉える生産者もいるようです。

ブドウの品質を上げるために、樹に実っている実がまだ緑色の段階でいくつか切り捨てることを『グリーンハーベスト Green harvest』と言います。いわゆる『間引き』ですが、全ての生産者が行っている訳ではありません。

ひと房辺りにより多くの栄養を与えブドウの品質を上げるためにされることが多いのですが、日光の当たり方、カビなどの衛生的な事情で発育不良を防ぐために行う場合もあります。

ワイン造りに独自の強いこだわりを持つ生産者の中には、グリーンハーベストは『人工的な』行為であり好ましくない、という考えで行わない生産者もいます。


ブドウが成熟するにつれ、緑色だった実が黄緑色、紫色へと色づいていきます。このことを『ヴェレゾン Veraison』と言います。ブドウの粒は房の上の方から順番に、という訳ではなく、ランダムに色づいていきます。


ヴェレゾンはブドウの樹の葉や実がしっかりと育った後、時期としては北半球では7〜8月にかけて起こりますが、健全に色づいていくには土壌の水分量が多すぎないこと、十分な日照があること、などが必要です。

そして、秋になると待ちわびた収穫が始まります。収穫は手摘みで行われる場合と機械で行う場合があります。ワイナリーのスタッフだけで行う場合もあれば、その時期だけ収穫のスタッフを採用する場合もあります。


時期としては、北半球では白ブドウ品種の早いもので8月後半に始まり、9月、10月と続きます。品種によって収穫時期は異なり、極甘口などの特殊なワインのブドウは11月、12月まで収穫が持ち越される場合があります。

収穫のタイミングを判断する基準となるのはブドウの熟度ですが、加えて雨の後のブドウは凝縮度が低くなるので雨の前に収穫する必要があり、天候も考慮して収穫の日が決められます。



収穫にまつわり話に出るのは、『収量』です。『収量』とは、一定の面積で収穫されるブドウの重量、もしくは果汁の量のことです。

収量は二通りで表記されることが多いのですが。『〇〇t/ha』の場合は1ヘクタール当たりブドウが何トン収穫されたか、という意味で、『〇〇hl/ha』の場合は、1ヘクタール辺り何hl(ヘクトリットル)の果汁が採れたかということです。

かつては収量が多くなればなるほど良い、という考え方が主流でしたが、今は量より質にシフトしている生産者が多い傾向にあります。

樹の仕立て方や、栽培地域ごとの規定により大きく変化する数字なので平均値を取ることは難しいのですが、フランスの銘醸地では30~50hl/haくらいというのが感覚値でしょうか。

収穫されたブドウは急いで醸造設備に運ばれ、醸造が始まります。

収穫が終わった後、畑に残った樹々の葉は美しく紅葉し、やがて冬に近づくと落葉していき、また収穫に向けての新しい1年が始まります。




他にもまだ行うべき作業はありますが、大まかに畑での流れをまとめてみました。

時に優しく時に厳しい自然の中、造り手達は様々な試行錯誤を繰り返し育まれたブドウ。そんなブドウがワインの中に詰まっています。




公開日 :
2022/11/08
更新日 :
2022/11/09

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