2022-04-04
ワインの熟成にまつわる基礎用語
ワイン造りにおいて大事な製法のひとつに、『ワインを熟成させる』というものがあります。今回はその『熟成させる』という製法にまつわる用語をまとめてみたいと思います。
熟成とは
醗酵が終わったワインは、そのまま、最後に出荷前の仕上げだけ行って販売されるワインもあれば、醗酵の後に、『熟成』という工程を経て完成させるワインもあります。赤ワインは特に熟成を行う方が主流です。
『ワインを一定期間置いておく』というのが『熟成』の基本的な考え方ですが、寝かせる方法は大きく分けて、『オーク樽で置いておく』場合と、『それ以外の容器(ステンレスやコンクリート)で置いておく』場合と、『ボトルに詰められた状態で置いておく』場合があります。
ちなみにこの『熟成』させる事を、フランス語で、『エレバージュ』といいます。
オーク樽
寝かせる容器のひとつ、『オーク樽』とは、オーク材の木の板を使って造られた樽ですが、この樽も、地方によって、生産者によってサイズや呼び名が違っていたりします。
一番メジャーな呼ばれ方が、『バレル』や、『バリック』で、本来はフランス、ボルドー地方で使われている225Lのサイズのものの名称ですが、現在は、『ワインを寝かせる木樽』という意味として、『バリック』と呼ばれる事も多くなっています。
これがボルドーの225L容量の樽
同じフランスでも、ブルゴーニュ地方では、同じような樽が『ピエス』と呼ばれます。先ほどの『バリック』が225Lの容量サイズなのに対し、『ピエス』は228Lです。
また、『フードル』などと地方によって呼び名は違いますが、もっと大きな、人の高さ位の樽、一般的には、『大樽』と呼ばれる容器で熟成される事もあります。
イタリア、キアンティ地区で使われていた大樽
熟成をされる場所
そういった、樽や、ステンレスやコンクリートの貯蔵槽、ボトルなどを寝かせておく場所の事を、『セラー』や、『カーヴ』と呼びます。
倉庫の様な建物に加え、地下を掘って造られている場合もあります。地下に掘っているセラー、カーヴが多い地方の例として、フランス、シャンパーニュ地方があります。
写真は、フランス、ブルゴーニュ地方の生産者のセラーですが、雰囲気がありますね。
熟成にまつわる作業
ワインを熟成させると、『澱』が発生します。この『澱』とは、熟成させている際に生じる沈殿物の事で、ポリフェノール、酒石、酵母、タンニンなどが混ざったものです。
ボトルで寝かせておいて出てきた澱
この澱を取り除く作業は、『澱引き』といいます。特に樽の中に沈殿した澱を取り除く作業は、『スティラージュ』と呼ばれます。
また、樽で熟成させていると、水分が蒸発し、量が少し減るので、同じワインを継ぎ足す事があります。この作業は『ウイヤージュ』といいます。減ったままにしておくと、空気と触れる面積が増え、必要以上に酸化が進んでしまうのです。
スティラージュの作業中
熟成したワインの見分け方
熟成をさせたワインは、『熟成されたワインです』というのを名前に記載しない事も多いので、産地やヴィンテージを見たりして、熟成する事が多い地方なのか等を知っておく必要がありますが、中には、ワインの名称で、熟成されたタイプのワインである事が分かる場合があります。
例えば、ワイン名に、『レゼルバ』や『レゼルヴァ』と書かれている場合です。『レゼルバ』というのは、一般的に『一定期間、樽で寝かせて熟成してから出荷されたワイン』の事なのです。
ただし、『レゼルバ』と名乗る為の決まりがある国と、無い国があります。
例として、スペインでは赤ワインがレゼルバを名乗る為には、最低36か月熟成する必要があり、そのうち12ヵ月は樽熟成の必要があります。しかし、チリでは規定がないので、『スタンダードなワインより、少し上ランクのワイン』という意味で、生産者が独自の判断で付けていたりします。
ワイン名に付いていない場合は、売り場に並んでいるヴィンテージより古めのものを選ぶと、熟成をされたワインである事が多い、かと思います。
スペインでの熟成の表記について
スペインでの熟成の表記の説明になりますが、先ほどの『レゼルバ』よりも、控えめに熟成させたものに、『クリアンサ』と名前が付けられます。
『クリアンサ』は、規定では、赤ワインは最低24か月以上(うち6ヶ月以上は樽熟)、白ワイン、ロゼワインは最低18ヵ月以上(うち6ヶ月以上は樽熟)、熟成したものに記載する事が出来ます。
そして、『レゼルバ』よりも更に熟成させたものが、『グラン・レゼルバ』です。
『グラン・レゼルバ』という表記をするには、赤ワインは最低60ヵ月以上(うち樽にて18ヵ月以上)、白ワインとロゼワインは最低48か月以上(うち樽にて6ヵ月以上)熟成させる必要がある、と規定されています。
以上、熟成についてでした
何かとあわただしい現代の中で、ゆっくりと時を経て造られた味わいを楽しむ事が出来るのは素敵な事ですね。
ちなみに、写真はどちらも、ボルドーの『バリック』ですが、片方の写真は真ん中が赤い色になったバリックであるのに対し、もう片方の写真のバリックは、色が全く付いていません。この違いは、澱引き作業前か、後か、の様です。
澱引き作業をすると、どうしても赤ワインが樽に、『だら〜』とか、『ぴっ、ぴっ』と付いてしまいます。そのままにするとみっともないから、真ん中の部分は全体をワインで赤く塗る/拭く?そうです。
アルコールが含まれたワインを塗る事が、衛生管理に役立つ、とも聞いた事があります。どっちでしょうね?どっちでもなかったらすみません。
- 公開日 :
- 2022/04/04
- 更新日 :
- 2022/10/20
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