2022-06-22

ドイツで使われるブドウ品種

一般的には赤ワインの生産量の比率が高い国が多い中で、ドイツはめずらしく白ワインの方が多い国です。また、甘口の白の生産が多いのも特徴的でしたが、どちらも変動の中にあります。そんな中で主となる、ドイツで栽培されているブドウ品種を見ていきましょう。

ドイツは比較的冷涼な国です。国の真ん中より少し下位の北緯50度の辺りに、いわゆるブドウ栽培の北限がある為、全部で13ある栽培地のうち11は、南西部に集まっています。そして、国の中心から、やや北東の辺りに残りの2つの栽培地があります。

ドイツは案外雨が多い地である事、また、冷涼な気候である事から、川沿いの斜面の、水はけが良く、日照を得やすい地域を中心に栽培が行われてきました。


従来は、冷涼な中で、いかに日照を得て、完熟したブドウを栽培するか、というのが焦点でしたが、近年は冷涼なスタイルのワインに人気が高まっていたり、温暖化の影響を受けたり、で、むしろ冷涼な栽培条件が求められていたりします。



ドイツは、品種に関しては、もともと、リースリングなどのドイツ固有の白ブドウ品種が中心であった所に、赤ワインブームにより、黒ブドウ品種の栽培比率が上昇しました。また、国際品種も徐々に増加の傾向にあります。

質より量の時代はいくつかの品種がブレンドされる事が多かったのですが、『質』重視の方向に転換してからは、単一品種でワインが造られる事が多い傾向にあります。

また、ドイツワインは、基本、フルート瓶、と言われる、すらりとした瓶に入っている事が多いのが特徴です。赤は、ボルドー型、ブルゴーニュ型、品種によって様々です。


『リースリング』は、間違いなくドイツを代表する白ブドウ品種です。酸味のしっかりした辛口ワインから、高品質の極甘口ワインまで造られます。香りはマスカットや白い花に加え、ペトロール香(油)のニュアンスが出る事もあります。世界的な食のライト化に影響され、甘口よりも辛口の比率が高くなっています。

リースリングの特徴として、ブレンドせず単一でワインが造られる事が多いです。リースリングの特徴がはっきりしているから、だと思われます。


冷涼な気候の地域が栽培に向いている品種で、冷涼なドイツは適地でした。主な産地はドイツですが、長くから栽培されているフランス・アルザス地方に加えて、国際的に人気の高まる品種で、アメリカやオーストラリアなど、多くの国で栽培されています。

ドイツ国内では、13の栽培地、全てで栽培されていますが、一番主要なのは、『モーゼル地方』と、『ラインガウ地方』です。辛口から甘口までリースリングを使った多くの銘醸ワインが造られています。

リースリングに次いでドイツの主要な品種なのが、『ミュラー・トゥルガウ』です。柔らかな酸味とマスカットを想わせるアロマを持った、若々しく爽やかなスタイルのワインが造られる事が多いのが特徴です。

早熟で収量が多い傾向にあり、量より質が求められる傾向にある現代においては、栽培量が減っている品種ではあります。

20世紀初頭、スイス、トゥルガウ州出身のヘルマン・ミュラー教授がガイゼンハイム研究所で、リースリングとマドレーヌ・ロイヤルを交配させてできた、いわゆる交配品種です。教授の名前である、『ミュラー』が品種名につけられました。

長年、リースリングとシルヴァーナの交配品種だという説があった為、一部でリー(スリング)×(シル)ヴァーナで、『リヴァーナー』という呼び方もされています。

ドイツ国内の中での主な産地は、『フランケン地方』、『バーデン地方』、『ラインヘッセン地方』、『ファルツ地方』などです。

主にドイツに加え、オーストリアで栽培されますが、ニュージーランド、日本などでも栽培されています。



ドイツにおける主要な白ブドウ品種としてもうひとつ、グラウブルグンダーを紹介します。他の国で、『ピノ・グリ』や『ピノ・グリージョ』と呼ばれているブドウ品種です。ドイツが主たる生産地では無く、いわゆる国際品種のひとつです。

シュペートブルグンダー(=ピノ・ノワール)の突然変異種ですが、収量が多めで安定しており、糖度も高めのブドウです。皮は紫色をしています。粒の間隔が狭く、房がコンパクトであるため、ボトリティス菌がつきやすく、気品ある甘口ワインや貴腐ワインの生産にも向いています。

グラウブルグンダーは近年、辛口が多く、中くらいのボディで、酸味がアクセントとなったスタイルが造られます。




ここからは、主要な黒ブドウ品種を紹介します。

ドイツの黒ブドウ品種で一番栽培されているのは、『シュペートブルグンダー』です。別名である『ピノ・ノワール』の名で広く世界に知られています。果皮が薄い為、色合いも薄めですが、味わいは深く滑らかで、豊かな赤果実のアロマを持ち合わせたワインが出来ます。


赤ワインブームでドイツにも黒ブドウ品種栽培が増えた際に増加したブドウ品種ですが、冷涼なドイツの気候にマッチし定着しました。今では、ドイツを代表する黒ブドウ品種となっています。『バーデン地方』、『アール地方』で多く栽培されています。

このシュペートブルグンダーという名前は、「Spat(シュペート)=遅い」+「Burgunder(ブルグンダー)=ブルゴーニュの」が語源と言われている通り、884年にカロリング家のカール3世がシュペートブルグンダーの元となる苗をブルゴーニュ地方からボーデン湖畔地方にもたらしたと言われています。



ドイツで、シュペートブルグンダーに次いで栽培の多い黒ブドウ品種が、『ドルンフェルダー』です。色合いは深め、香りはチェリーやレッドカラント(カシス)を想わせる果実のアロマが魅力的です。タンニンが柔らかく飲みやすいワインが造られる事が多いです。甘口のタイプのものも造られています。

1955年にヴァインスベルク研究所のアウグスト・ヘロルド氏が、ヘルフェンシュタイナーとヘロルドレーベを交配させて産み出した交配品種で、もともと「色づけ用のワイン(デックロートヴァイン)」として交配されたものです。『ファルツ地方』と『ラインヘッセン地方』で多く栽培されています。

ドイツでも比較的新しい品種ですが、冷涼な地方でも色合いがしっかりしていて、栽培も比較的難しくない事から人気が高く、1979年に124haだった栽培面積が、2017年には7,649haにまで増加しています。今の所、ドイツ以外での栽培は少ないのですが、日本で少し栽培されています。




シュペートブルグンダー、ドルンフェルダーに比べると少し差がありますが、ドイツで3番目に多く栽培されている品種が、『ポルトギーザ―』です。色合いは明るめで、香りはイチゴやラズベリーを想わせるような赤果実主体です。比較的シンプルでフレッシュなワインが造られる事が多い品種です。

ルーツはオーストリア、あるいはハンガリーと言われています。シノニムとして、ポルトギザッツという名前があります。




ドイツは、リースリング、シュペートブルグンダーはラインナップに入れている生産者が多いですが、それ以外は、地域や生産者、価格帯によって、ばらつきがあります。これからしばらくは、色々変動がありそうです。


公開日 :
2022/06/22
更新日 :
2022/09/23

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