2022-10-21

ワインの醸造にまつわる用語

収穫されたブドウがワインになるまでの工程を『醸造』と言いますが、その工程には普段聞きなれないものもあります。今回は、そんなワインの醸造にまつわる用語を解説しながら工程を見ていきたいと思います。

収穫されたブドウから、未熟な実、劣化した実、葉っぱ等、不要なものを取り除く作業の事を、『選果』と言います。

加えて、畑での収穫時に適切なブドウの実のみを選んで収穫する、という事も選果に含まれます。

収穫されたブドウの選果は、ベルトコンベアーの上で作業を行う所が多いですね。光センサーを使った選果台の導入も進んでいます。


ブドウの実をつないでいる部分を『果梗』と言うのですが、その果梗を醗酵の前に取り除く事を『除梗』と言います。

取り除く事で果梗から出る未熟なタンニンや雑味を防ぐ事が出来ます。また、細菌等の衛生管理を理由に行う場合もあるようです。

除梗を行うとワインの味わいはよりピュアで果実味が上手く表現されやすいとされています。

これに対し、あえて除梗を行わず果梗を付けたまま醗酵を行う事を『全房醗酵』と言います。(※全房醗酵は赤ワインのみに当てはまる手法)

全房醗酵はタンニン、特有の香り、骨格をワインに与える事が出来るとされていますが、品種の向き、不向きがあり、ピノ・ノワール、シラーなどが向いているとされています。




ブドウの選果後、果実の粒を潰す工程を、『破砕』と言います。果粒を破砕する事で果汁が絞りやすくなります。

この果粒が潰れた状態は『マスト』と言います。マストは日本語の表現では『果醪(かもろみ)』と言うのですが、日本でもワイン業界ではマストという表現の方がよく使われている気がします。

ブドウの果汁やマスト(果醪)を樽やタンクなどの醗酵容器に入れ、酵母の力で糖分をアルコールに変える醗酵の事を『アルコール醗酵』と言います。

『ブドウの果汁やマスト』と言ったのは、白ワインはジュースの状態になってからアルコール醗酵を行い、赤ワインはマスト(果醪)の状態でアルコール醗酵を行うからです。

酵母は添加するか、ブドウや醸造所に付着した天然酵母を取り込んで行います。果汁やマストは時に補糖される事があります。

このアルコール醗酵が進むにつれ糖分がアルコール(エタノール)と二酸化炭素(炭酸ガス)に分解されていきます。

赤ワインのアルコール醗酵が始まってしばらくすると並行して、果皮・種子から色素と渋みが出てくるのですが、この過程を『マセラシオン(醸し)』と言います。赤ワインの醸造時の過程に使われる用語です。

この過程ですが、アルコール醗酵が始まって3〜4日経つと、ブドウの果皮、種子から赤ワインの色素成分であるアントシアニンが、また、種子からは渋みの主成分であるタンニンがアルコール醗酵中の液体に溶け出てきます。

このマセラシオンをスムーズに進める為に、醗酵槽の上部に溜まる果皮や果肉(=果帽)をかき混ぜたり、タンク下部の果汁を抜いて液面上から散布したりします。

前者の『かき混ぜる』手法を『ピジャージュ』と言い、後者の『抜き取り散布する』手法を『ルモンタージュ』と言います。

ちなみに、『マスト』と『果帽』が混同してしまいそうなのですが、『マスト』は果粒が潰れた状態全体を指し、『果帽』はそのマストの上部に浮かんでくるブドウの果皮、種、果肉等の塊の事を指します。





果皮、種子から、果汁もしくはワインを絞り出す事を『圧搾』と言います。

この圧搾を行うタイミングは赤ワインの醸造時と白ワインの醸造時で異なります。

赤ワインは
『破砕 → アルコール醗酵&マセラシオン → 圧搾』

白ワインは
『破砕 → 圧搾 → アルコール醗酵』
という順番です。

かつてはいかに搾る量を多くするか、という点に焦点が当てられていたましたが、近年の生産者は目指すスタイルや品種によって圧搾の方法、強さ、タイミング等を調整しています。





白ワインを造る際、ブドウを破砕後すぐに圧搾して果汁と果皮を分けてしまうのが普通ですが、すぐに分けずにしばらく果皮を果汁に浸漬させ、果皮からの成分抽出を行う事を『スキン・コンタクト』と言います。こうする事で、果汁にブドウ品種の特性をより濃厚に与える事が出来ます。

先程の『マセラシオン』と効果的には似た工程です。まとめますと、『スキン・コンタクト』は白ワインの工程のひとつで、醗酵前のジュースの段階で果皮を漬け込み抽出を行っているのに対し、『マセラシオン』は赤ワインの過程のひとつで、醗酵中にマストの状態で抽出を行っている過程の事ですね。

アルコール醗酵の後、ワイン中に含まれるリンゴ酸が乳酸菌の働きによって乳酸に変化する現象の事を『マロラクティック醗酵』と言います。会話では略して『マロ』と言われる事もあります。(私は言わない派です。)

ワインに含まれる「リンゴ酸」が、果皮に付着していた乳酸菌の働きによって「乳酸」と「炭酸ガス」に変化します。これによりワインの酸味はやわらげられてまろやかになり、酒質に複雑味が増し、豊潤な香味を形成します。また、微生物学的にも安定する、という効果があります。

このマロラクティック醗酵は、アルコール醗酵の後にそのまま自然に始まる場合もありますが、多くは、管理の元乳酸菌を添加する事が多いようです。




醗酵の終わったワインを、タンクまたは樽にて品質が安定するまで保管する事を『熟成』と言います。熟成を行う事を、『寝かせる』と表現される事もあります。

熟成はステンレスタンクや木樽で行われますが、木樽で行う場合は、『樽熟成』と言われます。

熟成は行う場合と行わない場合があります。早飲みのフレッシュさを大事にしたいワインは行いません。比較的、白ワインよりも赤ワインの方が熟成をしっかり行う事が多いですね。



瓶詰めを行う前に卵白やベントナイト、ゼラチンなどを用いワインの中の濁り成分を塊にし、沈殿させて取り除く事を『清澄』、『ファイニング』と言います。ワインの清澄度を上げるのが目的です。

ベントナイトなどの清澄剤は電荷をもっており、ワイン中の濁りの成分が、清澄剤の電荷とひきつけあう事で塊が出来ます。ベントナイト、卵白、タンニン酸、ゼラチンなどが清澄剤として用いられますが、2つ以上を組み合わせて使う事もあります。

過度な清澄は味わいのバランスを崩す事があります。生産者によっては全く清澄剤を使用しない場合もありますが、行う方が主流です。



ワインをフィルターに通過させて、浮遊物、微生物を取り除く事を『濾過』と言います。

浮遊物と共に、香り、味わいの特徴が損なう場合があるという事で、濾過を行わない場合もあります。その場合は『無濾過(=ノンフィルター)』と呼ばれますが、残糖がある場合は再醗酵の可能性が生じるので注意が必要です。






『瓶詰め』はワインを瓶に詰める作業の事です。これで基本ワインは完成ですが、瓶詰めされてから数ヶ月寝かせるという工程が終わってから出荷が可能になる、という場合もあります。


以上、ワインの醸造にまつわる用語を解説してみましたが、工程が分かってくると用語も頭に入りやすいですね。最近は生産者の醸造の過程の動画もアップされていたりするのでそういった動画も見るのもおススメです。

公開日 :
2022/10/21
更新日 :
2022/10/21

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