2023-02-13

解説ワイン用語  『アロマティック品種』と『ニュートラル品種』

ワインに使われるブドウには様々な品種がありますが、『アロマティック品種』や『ニュートラル品種』と分類して説明される事があります。今回は、これについて少し解説してみたいと思います。

『アロマティック品種』とは

『アロマティック』とは『香りが豊か』という意味で使われますが、ワインにした時に香りが強く感じられるブドウ品種の事を『アロマティック品種』と呼びます。

もう少し厳密にいうと、ワインの香りにはいくつかありますが、ブドウ由来の香りである『第1アロマ』、醗酵由来の香りである『第2アロマ』、熟成由来の香りである『ブーケ』、その中の、『第1アロマ』がワインから強く感じられる品種の事を指します。

『アロマティック品種』で感じられる『第1アロマ』の香りとしては、ライチやマスカットなどのフルーツを想わせる香り、バラなどの花を想わせる香り、草、芝生などの植物を想わせる香りなどが挙げられます。

代表的な『アロマティック品種』 その1

『アロマティック品種』と呼ぶのに規定は無い為、何をアロマティック品種に含むかは、人によってばらつきがあると思いますが、この5品種は含まれている事が多いです。

  ゲヴュルツトラミネール
  リースリング
  ヴィオニエ
  ミュスカ
  ソーヴィニヨン・ブラン

そして、それぞれの特徴的な香りとしては、

  ゲヴュルツトラミネール … ライチやバラ
  リースリング … 白い花や柑橘
  ヴィオニエ … 桃やあんず
  ミュスカ … マスカット
  ソーヴィニヨン・ブラン … パッションフルーツや芝

などが挙げられます。

生産者はアロマティック品種を使う時は、その香りを生かすように、低温で醗酵を行ったり、熟成させる時には樽を使わない、もしくは控えめにしたり、等の工夫をします。

とはいっても、もちろん、産地や醸造方法によって、そこまで特徴的とされる香りが強く無い時もあります。



代表的な『アロマティック品種』 その2

続いて、『アロマティック品種』として挙げられやすい品種として、

  ピノ・グリ
  トロンテス
  ミュラートゥルガウ
  アルバリーニョ
  シュナン・ブラン
  マルヴァジア

などが挙げられます。

ピノ・グリがやや、「アロマティック品種かな?」と外される事もありそうですが、それ以外は最初に挙げた5品種よりメジャー度が低いですが、大抵の人がアロマティック品種に判断されると思います。

補足として、香りの研究をされていた故富永教授は、ソーヴィニヨン・ブランの独特なパッションフルーツや芝などを想わせる香りは、果汁の段階では存在せず、醗酵によって生み出されているとする研究結果により、ソーヴィニヨン・ブランをアロマティック品種から外されているのですが、現在の一般的な状況としてソーヴィニヨン・ブランはアロマティック品種に含まれる事が多いので、ここでは含ませて頂きました。



アロマティック品種と呼ばれないパターン その1

ワインの香りが強いのに、アロマティック品種と呼ばれない場合があります。

まず、果実由来の香りでは無く、醗酵や熟成に由来する香りを持つワインである場合です。第1アロマ以外の香りが豊かな場合ですね。

代表的なのがシャルドネで、シャルドネは品種自体による香りが強くなる品種では無いのですが、樽熟成との相性が良く樽で熟成される事が多い為、樽熟成由来のヴァニラやココナッツなどの香りがたっぷり感じられる事があります。この場合、とっても『アロマティック』なワインですが、品種自体はアロマティック品種とはなりません。


アロマティック品種と呼ばれないパターン その2

次に、果実由来の香りなのだけれど、感じられる香りが多くのワイン/ブドウ品種に共通しがちな香りの場合です。

白ワインの果実由来の香りの中で、最もありがちなのはリンゴやレモンを想わせる香りですが、リンゴやレモンのフルーティーな香りがたっぷり感じられるワイン/ブドウ品種の場合は、アロマティック品種と分類されにくい気がします。



アロマティック品種と呼ばれないパターン その3

最後に、赤ワインはアロマティック品種として挙げられる事があまりありません。

赤ワインにも、特徴的な果実由来の香りがはっきり感じられるワイン/ブドウ品種があるのですが、それでも、アロマティック品種と呼ばれる事が少ないようです。

推測として、白ワインに比べて赤ワインは、樽を使い比較的長く熟成され、熟成由来の香りを沢山含む事が多い為、果実由来の香りだけが突出してこないので、アロマティック品種かどうか、という話になりにくいのかな、と考えたりします。

加えて、香りの成分は概ね果皮由来ですから、果皮と一緒に醗酵させる赤ワインは全般的に果実由来の香りが豊かになりがちなのに対し、果皮を除いた果汁のみで醗酵させる白ワインは果実由来の香りが少なくなりやすい為、香りの豊かなものを『アロマティック』だ、とくくって取り上げられるのかも、とも考えたりします。


アロマティック品種の余談

余談ですが、リースリング、ヴィオニエ、ゲヴュルツトラミネールなど、アロマティック品種に挙げられるものは、ワインがほんのり甘口に仕上げられる可能性が他の品種より多いですね。

甘口が造れるという事は、それだけそのブドウ品種は糖度が上がりやすい、糖度が上がるまで収穫を待ちやすい、乾燥した所での栽培が適している、といった特性を持つブドウ品種である訳ですが、そういった特性を持つブドウ品種がアロマティック品種のグループに多いのだと思います。

そして、それに加えて、生産者に聞いた事があるのが、アロマティック品種に含まれやすいテルペン化合物の成分は、同時に苦み成分を持ちやすく、その苦みのバランスを取る為、ワインをほんのり甘口〜甘口に仕上げる事が多い、という説です。

もう一つ余談ですが、セミ・アロマティック品種という分類もあるようです。ゲヴュルツトラミネールやリースリング程じゃないけど、ちょっと香りがしっかりしていて、という品種に使われるようですね。



『ニュートラル品種』とは

果実由来の香りが豊かな『アロマティック品種』に対して、ワインの香りが控えめなブドウ品種の事を『ニュートラル品種』もしくは、『ノンアロマティック品種』と呼ばれます。

こちらも厳密にいうと、ブドウ由来の香りである第1アロマの香りが控えめである品種の事です。

代表的な『ニュートラル品種』

こちらの『ニュートラル品種』も規定はされていないので、挙げられるものに幅はありますが、代表的な品種としては、

  シャルドネ
  甲州
  ミュスカデ

これらが挙げられます。

ミュスカデとミュスカ混乱しやすいですね。

香りが控えめなのは寂しい感じがしますが、ニュートラル品種だからこそ活躍している場面があります。

【写真:皮が薄紫色な甲州】

『ニュートラル品種』の代表格、シャルドネ

シャルドネは世界各国で数々の銘醸ワインを産み出している、高貴な品種であり、アロマティックなワインが沢山ありますが、ブドウ由来の香りは控えめなニュートラル品種です。

ブドウ由来の香りは控えめなのですが、樽で熟成したり、醗酵したり、瓶熟成したりする事で、バターやナッツなどを想わせる素晴らしい香りが生じます。その素晴らしい香りと、控えめな果実由来の香りとのバランスがいい塩梅なのですね。

シャルドネは白飯だ、なんて例えられる事もあります。白飯が程よくプレーンであるからこそ、一緒に合わせるおかずが引き立つように、シャルドネのニュートラル加減が醸造の技術による効果を上手く表現できているといわれます。


他のニュートラルな品種

上記の3つ以外にも『ニュートラルな』品種は数多くあり、そのニュートラルさを生かした使われ方をしています。

例えば、イタリアではトレッビアーノとしても知られるユニ・ブランからはコニャック、アルマニャックなどの高品質なブランデーが造られます。スペインのシェリーはニュートラルなスタイルであるパロミノが多く使われています。

酒精強化ワインやブランデーなどには数々のニュートラル品種が無くてはならない存在ですね。

また、シャルドネがスパークリングワインにしばしば使われるように、ニュートラルな品種はスパークリングワインを造る際も活用されているケースが多くあります。

まとめ

アロマティック品種とニュートラル品種、個性として分かりやすいので、ワインを選ぶ際の参考になりますね。

まずは代表格のゲヴュルツトラミネール、リースリング辺りを試してみると良いとも思います。香りが自分には強すぎるな、と思われたら、ワインの温度を下げると香りが引き締しまるので、お試しください。



公開日 :
2023/02/13
更新日 :
2024/01/24

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